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ハーフタイム。各自が水分補給をしながら、永田監督の話に耳を傾ける。特に大きな作戦変更はない。今迄、練習でやってきたことを出し切ろう、という話だった。
「よし、後半、逆点するぞ!」
「おおっ!」
キャプテンの小林君の檄に、みんなが応えてベンチから飛び出して行った。
「必ず勝つから」
奏多が側に来て、わたしに声を掛けた。
「うん。がんばって」
わたしは頷くと、奏多を笑顔で送り出した。
勝たせてあげたい。心の底からそう思った。いつもは飄々としているから、今一、本音が分からないところがある奏多だけど、ことサッカーに関しては別だった。サッカーに関しては、奏多はストレートだった。真っ直ぐに打ち込んでいる姿が眩しかった。打ち込むものがなかったわたしは、いつしか、そんな奏多に惹かれていったのかもしれない。
だけど、今は……
わたしは、自分の想いを脇に置いて、センターラインの方に駆けていく奏多の背中を、そっと見つめた。
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