帰り道

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 当然ながら、次はないよなー。  次の日の帰り道。  わたしは、そう思いながら、一也くんの後ろを、とぼとぼと付いて歩いた。  だって、一也くんは、転んだわたしを助けてくれただけなんだから。  昨日が最高に幸せだっただけに、なんか虚しい。  浅はかだったなー。  自分の行動を悔やみながら歩いていると、自然と一也くんと距離ができてしまった。 「はあ」  わたしは、ため息を一つつくと、気を取り直して小走りに一也くんに追いついた。  一也くんが、チラリとわたしを振り返る。  にこっ。  わたしは、一也くんに微笑む。  上手く笑えた?  顔、引き攣ってなかった?  何だよ。  好きな人と一緒にいるのに、何で気持ちが沈んでいるんだよ。  涙が溢れそうだった。  わたしが下を向いた、その時。  誰かが、わたしの左手を、ぎゅっと握ってくれた。  一也くんだった。 「また転ぶといけないから」  一也くんは、少し頬を赤くして、わたしを見つめた。    思わず涙が溢れる。 「え?え?何で泣くの?」   「転んだ?え?転んでないよね?」  一也くんが慌てふためく。  ぷっ!  思わず吹き出す。  一也くんの言葉と、行動がおかしくて。 「ばか、転んだ訳ないじゃん!」  グスン、クク、ウウ、アハ、クゥ、アハハ  わたしは、泣き笑いで、顔も気持ちも、ぐちゃぐちゃになった。    
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