幼なじみだからって

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幼なじみだからって

「キモ」  朝から、にやついている、わたしを見て奏多が言う。  しかし、無礼な一言を言われても、全く気にならない。  わたしは微笑みを讃えながら道をいく。 「ふふ」  昨日のことを思い出すと自然と笑みが溢れた。 「そんなに嬉しいもんかねー」  奏多が呆れた顔をする。 「君も恋をしたまえ」  わたしは、さも恋の大家のような顔をして奏多に言った。 「ふーん」  奏多は腕を組んで、考える素振りをする。  くくくく。  勝ったな。  わたしが勝ち誇った表情で満足げに、ほくそ笑んでいると、  ぎゅっ  突然、奏多がわたしの右手の掌を握った。  え?  一瞬、何が起こっているのか理解できない。 「ふむ」  何か考えている奏多。  て、おい! 「ちょっと、何やってんのよ!」  わたしは、少しだけ、ドキドキしながら奏多に抗議する。 「普通だな」  奏多が言い放つ。 「はあー!当たり前でしょ」  少しドキドキしたのが悔しい。わたしは、手を振り払うと、 「わたしは、一也くんのものなんだから、気安く触るんじゃない!」  と怒った。 「ふん、何を今さら、保育園の頃から何回も繋いでるし」  睨みつけるわたしに、奏多はそう言うと、ひょいと肩をすくめて歩いていってしまった。    
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