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田辺君は小林君が蹴った勢いのあるロングボールを巧みにトラップすると、ドリブルでゴール前へと迫る。
虚を突かれた相手の対応が少し遅れた。
「上がれ!」
鋭い小林君の指示がとぶ。
いち早く田辺君の側にフォローに走っていた奏多が田辺君のパスを受けた。そして、ワンツーで田辺君に再びボールを返す。
敵の選手はその動きに付いてこれず、後方に置き去りになる。
田辺君はさらにゴール右端へとドリブルで切れ込んだ。本当に足が速い。そこへ、味方の選手が三人、ペナルティエリア内に走り込んで来た。
相手のディフェンスは三人。こちらは四人。数的優位を作り出した。ゴールを決める千載一遇のチャンスだった。
田辺君は自分でそのままシュートを打つことも出来たし、味方の三人にラストパスを出すことも出来た。
田辺君は……パスを選択した。
キーパーとディフェンスとの間を狙った絶妙なラストパスに、三人の内の丁度真ん中にいた選手が飛び込んでシュートを放つ。
しかし、シュートは横っ飛びをしたキーパーのナイスセーブに阻まれてしまった。
ああ、駄目か。みんながそう思った時、キーパーに弾かれてゴール前を転がるボールに一人の選手が飛び込んだ。
奏多だった。
奏多が利き足とは違う左足で放ったシュートは、大した威力は無かったけど、相手ゴールの右隅へと吸い込まれていった。
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