親友

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親友

 教室に入ると、一也くんは、もう席に着いて漫画を描いていた。  取り巻きの男子が二人、彼の描く漫画を後ろから覗き込んでいる。  いつもと変わらぬ朝の光景に、ほっとして、わたしは自分の席に着いた。  学習用具を出して机の中に入れると、鞄を教室の後ろにあるロッカーにしまいにいく。 「遥!」  教室の後ろの扉の所から、恭子がわたしを呼んだ。  恭子は小学生の頃からのわたしの親友だ。  残念ながら、わたしとは別のクラスになってしまったが、恭子は奏多と同じクラスだった。 「何?」  わたしは、鞄をロッカーにしまうと、恭子のところに歩み寄る。 「彼氏が、できたって本当?」  ざわざわしていたクラスが、一瞬で静まり返る。 「ちょっ、きょ、恭子!声が大きい!」  わたしは慌てて恭子の口を手で塞いだけど、時既に遅しである。  わたしは、そのまま恭子を扉の所から引き剥がすと、手を引いて人気のない渡り廊下迄連れ出した。
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