44人が本棚に入れています
本棚に追加
「よっしゃー!」
田辺君が雄叫びを上げる。
キャプテンの小林君が腰の辺りで小さくガッツポーズをする。
それから、二人は奏多のところに駆け寄った。
「ナイス奏多!」
田辺君が奏多に声を掛ける。
小林君は奏多とガッチリと抱き合う。
奏多はニヤリと笑うと、「ナイスラン、ナイスパス」と声を掛けて、お互いを讃え合った。
失点の後、何やら三人で話していた作戦が、どうやら上手くいったようだった。
ピーーッ!!
そこで前半終了のホイッスルが鳴った。
相手チームの選手達は一様に口惜しそうな表情を浮かべてベンチに引き上げていった。
奏多達は意気揚々と引き上げて来る。前半に追いつけたのはとても大きい。これで後半、逆転を狙って攻めていくことが出来る。
「先輩、ナイスシュート!」
奈実ちゃんがタオルを持って奏多に駆け寄った。相変わらずの弾けるような笑顔が炸裂する。
「サンキュ」
奏多も満更でもなく嬉しそうだ。
「先輩、すごいです!利き足じゃない足でシュートを決めるなんて」
こ、これは!以前、わたしが一也君に対して行い絶大な効果を上げたという、ホメホメ作戦ではないか?
こら!奏多、デレデレするんじゃない。
わたしは、少しむっとしてしまう。しかし、今のわたしには関係ない。わたしは、もう恋愛はしないと決めたんだ。
わたしは首を横に振って雑念を追い払うと、ベンチに置かれていたタオルを掴み、他の選手達に渡しに行った。
最初のコメントを投稿しよう!