初恋

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 水口一也。  わたしの初恋の人。  漫画を描くことが好きな普通の男の子。  正直、その子の描く漫画は、どこが面白いのか分からなかった。  なんか、いつも誰かと誰かが戦っている、そんな漫画だった。  男の子は、どうして、そんな漫画が好きなんだろう?  だけど、漫画を描いている時の一也くんは、とてもいい。 「一也くん」  わたしが話し掛けても、返事なんかしてくれない。  だけど、一心不乱に漫画を描いている姿は、素敵だった。  何ものをも寄せ付けない厳かさがある。    そうかと思うと、何かを閃いて、にやにやと笑みを浮かべながら描いている。  見ていて面白かった。  わたしにも、一也くんみたいに、何か夢中になれるものがあるといいのに。  そう思った。    
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