8人が本棚に入れています
本棚に追加
/269ページ
"ユーサイキアには時間は在るようで無いもの"
その大きな意味が今の俺にはようやく理解できた。
もはや、奇跡では呼び表せない奇跡の連続が僕の身へ降りたのも、紛れなく"彼女"のおかげ。
女王が己の存在をかけて生んだ奇跡――少女が遺した小さな奇跡のカケラは今、俺の左手にある。
だから、今度は――今度こそ、俺が彼女を救う番だ。
「――……」
俺は右手の槍杖と左手の宝石へ力を込めながら、胸に熱い炎を灯して呟く。
途端、槍杖の切先ですら傷一つ付けられなかった水晶花に大きな亀裂が走った――。
「っ――――」
眩い雪色の光に包まれながら砕け散る水晶。
透明な花びらの中から、あの可憐な懐かしい両手と笑顔は俺と背後のディスペラティオを捉えた。
・
最初のコメントを投稿しよう!