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夕暮れに包まれた駅のホーム。人影がちらほらと立ち並び、少し寂しい雰囲気が漂っていた。
私はその場に立ち、次の電車を待っていた。おそらく、他の人たちも、私と同じ。
眩しい光が遠くから迫ってくる。それは、電車が近づいてくる兆候だった。周りの人々が、ゆっくりと前へ移動していく。私もそれに加わり、静かに電車を待った。
ふと、男性が私の横を通り過ぎた。男性というよりかは少年か。高校生くらいだろう。彼が通り過ぎる刹那、ちらりと見えた彼の顔に、私は思わず息を飲んだ。
別に、知り合いだったとか、すごくイケメンだったとか、そういうわけじゃない。
彼の顔、と言うよりかは、彼の纏っているオーラに、何かを感じた。
彼を追いかけなくてはいけない。直感的にそう感じた。彼の何が、私をそこまで掻き立てるのかは分からない。でもどうしても、そう思ってしまった。
私が動き出したとき、彼は、ホームの端ギリギリに立っていた。
嫌な予感がした。
そして、その私の予感は的中した。
彼は、倒れるように、線路に落ちていく。
私は咄嗟に駆け出した。
必死に腕を伸ばした。
彼の手を、掴みたくて。
「ーーーっ、痛っ、」
私は彼の手を掴み、そのまま自分の方へ引き寄せ、彼を抱きしめてホームに転がり込んだ。
「おい、大丈夫か」
周りの人が呼んだのだろう、駅員さんが私たちの顔をのぞき込む。
「とりあえず二人とも、駅務室に来てくれないかな?何があったのか詳しく話して欲しい」
私は素直にそれに応じて立ち上がる。彼も、渋々といった感じで立ち上がった。
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