お客1

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来店して30分、落ち着き安心した顔で女性は 身の上を話し出した。 地方から上京して彼氏と同棲生活が1年 だけど、彼氏の束縛、DV、暴言 怪我が絶えない、心身ともに疲れきってた。 「また彼氏が帰って来て……そこから記憶無くて」 カウンターの上に香箱座りしてるクロエ 撫でる女性 「気を失ったの?」 バイトが聞く 「う……ん、殴られたのかも?」 不安顔の女性 コップを洗いフキンで拭いてるマスター 「誰かに助け求めるのも勇気、逃げるのも勇気、生きていい。帰りなさい」 マスターの顔を見上げると穏やかな笑顔 「勇気……」 考え込む女性 「……」 顔を反らして目を閉じるクロエ 「ありがとうございます。勇気ですね!」 女性は気が張れたのか明るい笑顔で礼をいうと店を出た。 「ここはあの世とこの世を繋ぐ道にあるから、たまに迷い人が来る。幽体、霊体」 「マスター、彼女は息を吹き返したのかな?DVの彼氏が心配するとは思えないけど?」 「飛び降りるのも勇気だよね?」 「クロエ、何てこと言うの!」 バイトが怒る、そっぽ向き寝たふりするクロエ 満月が住宅街を照らす、12階建てマンションの1室、2LDKのリビングにはソファーとテーブルの間に横向きに倒れている男性、 表情はわからない、白いTシャツ、青いジーパンの女性の右手には血が付いた包丁 そう、カフェを訪れた女性だ! 興奮気味の女性の口元がほくそ笑む。 「立ち向かうのも勇気……ですね」 マスターはそう言ってコーヒーを入れると 新しいお客さんに出した。 「どうぞ」穏やかな笑顔のマスター
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