1.

1/1
前へ
/14ページ
次へ

1.

 夏が来ると、僕は父の田舎での出来事を思い出す。  楽しかった夏休み。そして、(あきら)兄ちゃんのことーー。  小学四年生の夏休みのことだ。     父と母が仕事で忙しく暇を持て余していた僕は、八月に入る頃、岩手の父方の祖父の家に一人で遊びに行った。  父が出勤途中に東京駅まで送ってくれて、新幹線に一人で乗った。岩手では祖父が駅まで迎えに来てくれることになっていたが、初めての一人旅は僕にとって大冒険となった。  それが忘れられない夏休みの始まりだった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加