6.

1/2
前へ
/14ページ
次へ

6.

「颯太、颯太――!」  おじいちゃんの声がした。知らせを聞いて、駆け付けてくれたのだ。 「彰兄ちゃんが、兄ちゃんが助けてくれた。に、兄ちゃんは?」  僕は聞く。周りを見ても彰兄ちゃんはいない。  僕の話に皆が、「もう一人溺れてるんじゃないか?」と大騒ぎになった。  大人達で滝壺や川下を探したが、彰兄ちゃんは見つからなかった。  僕は心配で、バスタオルを肩にかけてもらって、捜索を見守っていた。 (どうしよう。言いつけを守らなかったばかりに、彰兄ちゃんがーー)  僕を助けて溺れてしまったんだと思った。  最悪のことを考えて、僕は泣いていた。  辰ちゃんと真ちゃんも、やってきたお父さん達に叱られて、そのあと僕と並んで彰兄ちゃんの捜索を見守っていた。 「あ、あれ!」  辰ちゃんが川を指さした。 「あ!」  僕と真ちゃんも声を上げた。  彰兄ちゃんがいつも被っていた麦わら帽子が、川に浮いていたのだ。すぐに大人に言うと、帽子は引き上げられた。 「どうしよう、僕のせいでお兄ちゃん、溺れて死んじゃってたら」  僕は罪の意識で泣き崩れた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加