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6.
「颯太、颯太――!」
おじいちゃんの声がした。知らせを聞いて、駆け付けてくれたのだ。
「彰兄ちゃんが、兄ちゃんが助けてくれた。に、兄ちゃんは?」
僕は聞く。周りを見ても彰兄ちゃんはいない。
僕の話に皆が、「もう一人溺れてるんじゃないか?」と大騒ぎになった。
大人達で滝壺や川下を探したが、彰兄ちゃんは見つからなかった。
僕は心配で、バスタオルを肩にかけてもらって、捜索を見守っていた。
(どうしよう。言いつけを守らなかったばかりに、彰兄ちゃんがーー)
僕を助けて溺れてしまったんだと思った。
最悪のことを考えて、僕は泣いていた。
辰ちゃんと真ちゃんも、やってきたお父さん達に叱られて、そのあと僕と並んで彰兄ちゃんの捜索を見守っていた。
「あ、あれ!」
辰ちゃんが川を指さした。
「あ!」
僕と真ちゃんも声を上げた。
彰兄ちゃんがいつも被っていた麦わら帽子が、川に浮いていたのだ。すぐに大人に言うと、帽子は引き上げられた。
「どうしよう、僕のせいでお兄ちゃん、溺れて死んじゃってたら」
僕は罪の意識で泣き崩れた。
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