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「この写真の子はな、じいちゃんの弟の明良(あきら)だ。明るく良いと書いて、アキラと読む。お前位の頃に滝壺に飛び込んで、上がって来られずに死んでしまった。もう六十年近く前の話だ」  おじいちゃんより三歳下で、おじいちゃんが親のお使いで出かけている間に、集落の友達と滝壺で遊んでいて事故に遭ったそうだ。  いつもはおじいちゃんも一緒に遊んでいたから、もしあの日も一緒だったら絶対に滝壺には行かせなかったと、ずっと後悔しているのだという。 「だから、じいちゃんはお前にも滝壺では遊ぶなと言ったんだ。明良もお前のことを心配して、助けてくれたんだろう」  あの彰兄ちゃんが僕のおじいちゃんの弟だったなんて、信じられなかった。  でも写真の男の子は、やっぱり彰兄ちゃんだった。力強く僕の腕を掴み、滝の渦から僕を引っ張って命を助けてくれたのだ。  僕は仏壇に向かい、一生懸命手を合わせた。 「お兄ちゃん、ありがとう」  僕は心の中でお兄ちゃんに語り掛けた。 「また会えるって言ったよね? もう会えないの?」  答えは返ってこなかった。
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