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3.
僕はそのあと、彰兄ちゃんと近所の野原や山や川で遊んだ。
それはびっくりの連続だった。彰兄ちゃんは、いろんなことを知っている。
甘い野イチゴがある場所や、コゲラという小さなキツツキの巣があるところ。見るとぎょっとするけど、毒がない蛇が沢山いる草むら。
川では、小さな魚を捕まえる方法も教えてくれた。喉が乾いたら、とっておきの湧水が出る場所に連れて行ってもらい、ごくごく水を飲んだ。
こんなに走り回ったのは、去年の運動会以来かもしれない。
「いいか、絶対にあっちの滝には近づくなよ。滝壺に落ちると、上がってこれなくなるからな」
川遊びの途中、彰兄ちゃんは川の上流に見える滝を指さして言った。
「う、うん。わかった」
泳ぎがあまり上手じゃない僕は真剣に肯いた。
遊んでいる途中で、「あれ? アキラ、そいつ誰?」と近所の子供たちが二人やってきた。
背の高い子と、ちょっと太めの子、どちらも僕と同年代で、わんぱくな感じの子だった。
「うちの親戚。東京から来たみたい」
彰兄ちゃんが中途半端な紹介をするので、「て、寺島颯太です」と僕は自分で名前を名乗った。
「なんだ、アキラ、やっぱり寺島んちの子だったのか」と背の高い方の子が言う。その子は僕に向かって、「俺、辰也」と自己紹介してくれる。
「僕、真司、よろしくな」と、もう一人、ちょっと太めの男の子が言う。
聞けば二人とも、僕より一つ上の五年生だった。
彰兄ちゃんのお陰ですぐに二人と仲良くなり、気づいたら夕暮れまで夢中で遊んでいた。
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