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 お盆の入りの日、この集落では早朝、朝ご飯の前にお墓に祖先の霊を迎えに行く。僕もおじいちゃんとおばあちゃんについて、お墓へ行った。  お墓は集落にたった一つだけあるお寺の境内にあり、たくさんの人が来ていた。 「よお! 颯太」  辰ちゃんに声をかけられた。  辰ちゃんは家族皆で来ていたが、彰兄ちゃんや真ちゃんの姿は見かけなかった。時間が違うのか、家族の代表だけが来ているのかもしれない。  寺島家のお墓の前で僕達はお花を花入れに挿し、線香を焚いてお参りした。  お墓の横に墓誌という平たい石板があって、そこにたくさんの戒名と亡くなった年齢、あとは生きていた時の名前が書いてあった。九十歳で死んだ人もいれば、二十代の人や、一歳、二歳の赤ちゃん、それに僕位の年齢で亡くなった人もいた。  僕がそれを言うと、「昔は戦争もあったし、貧しくて子供が育たないこともあったからねえ」とおばあちゃんが呟いた。  お参りが終わり家に戻ると、今度はお盆のお供えが並べられた仏壇にお参りした。そして朝食を食べると、僕はすぐに水着に着替え、上にTシャツを着て、辰ちゃんと真ちゃんが待つ河原へ行こうと縁側でビーサンを履いた。 「颯太、お父さん、お昼には着くって連絡あったよ」  おばあちゃんが後ろから叫んだ。 「わかったー! それまでには帰るから!」  僕はおばあちゃんに答えて、家を飛び出した。
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