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 それで僕も二人の真似をして、Tシャツとサンダルを岩場に置くと、勇気を振り絞り滝壺に飛び込んだ。  僕の身体は一旦水中深く沈んだが、すぐに浮き出し水面に顔が出た。 (なんだ、危なくないんだ)  そう思った瞬間、ぐいっと足が引っ張られるような感じで、僕の身体は水中に深く沈んでしまった。と思うとまた身体が浮いていく。  これの繰り返しで、僕はパニックになり水を大量に飲んで、息もできず、溺れた状態になる。  岩場に上がった辰ちゃんと真ちゃんが何か大声で言っているが、何を言ってるのかわからない。  あとで知ったのだけれど、滝壺は水面から川底に向かう流れと、川底から水面に向かう流れがあり、僕はそのぐるぐる回る対流に巻き込まれて抜け出せない状態になっていたらしい。  地元育ちの二人はその流れをわかっていたから、横に避けて飛び込んでいたのだ。 (もう駄目だ。彰兄ちゃんやおじいちゃんの言う通りだった)  段々意識が薄れていく中で、僕は思った。  その時、突然誰かに腕を強く掴まれ引っ張られた。驚いて目を開けると、ランニングシャツから伸びた手が僕の腕をしっかり握り、僕を引っ張って対流から横に泳ごうとしていた。  彰兄ちゃんだった。  気がついた時には、僕は辰ちゃんが呼んできた大人によって岩場に引き上げられ、目から涙、鼻から鼻水を流しながら、ゲホゲホと大量の水を吐いていた。
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