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「じゃあ、一旦“中締め”ってことで、カンパーイ」
4年生の亘先輩のその言葉をきっかけに、カラオケボックスにいた私たちは、名残惜しそうにしながらも、ゾロゾロと帰り支度を始めた。
今夜は同じ大学の歴史探訪サークルの、私たち3年生主催の4年生の追い出しコンパ。
夕方からの2時間半の居酒屋の後、カラオケボックス3時間コース。
流石に飲み過ぎたのか、みんな結構出来上がってる。
時間は23時になるかならないか。
終電の早い子でも23時半のはずだし、駅はすぐそこだから、帰り支度を始めるのが少し早いような気もするけど、酔っ払いが「帰ろう」と言ってから実際に動き出すまでが長いのは、お酒を飲むようになってからまだ2年ほどの経験しかない私でも、何度も経験済み。
今夜は幹事として、みんなを、特に下級生の女の子たちを無事に帰らせなきゃいけないので、早めにお開きの時間を設定した。
「ね。綾香も電車でしょ〜。乗る方向違うけど、駅まで一緒に行こぉ」
私と一緒に駅に行こうと誘ってくれた真希も幹事だったはずなんだけど、なんだか4年生の先輩よりも酔っ払ってる感じだ。
真希の乗る方向の電車は23時半のはずだから、時間的に焦って移動する必要もなさそうだけど、真希のこの様子だと、駅のホームまで無事に階段上がれるような気がしない。
私の乗る方向の電車は、最終が23時50分だから、真希を電車に乗るところまで見送ってからでも十分余裕がある。
そこまで瞬時に計算。
「はいはい。分かった分かった。
カウンターにマイク返して精算済ませたら、一緒に行こうか」
「ほーい。じゃ、アタシ、ロビーのソファーに座ってるね。絶対置いてかないでよ」
私は苦笑いしながら軽くため息を吐くと、同じく幹事を務める他の3年生の子と一緒に後片付けを始めた。
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