会いたくなかった

私たちのサークルは、大学から日帰り圏内にあるマイナーな城跡や寺社仏閣を月に2回程度の頻度で巡るのがメインという、あまりにマニアックなテーマで活動している。
そのせいか、マンモス大学のくせに、このサークルには1年生から4年生まで合わせても総勢20人程度しかおらず、常時活動に参加してるメンバーは10人いるかいないか。
でも今夜の“追いコン”には、どうしても都合のつかなかった下級生2人を除いて、3年生と4年生は全員参加してくれていた。

ちなみに私は、1年生の時以来、月2回の活動は“ほぼ”皆勤賞。
地方から都心のこの大学に進学してきて、右も左も分からない新入生の時の私が、最初に新歓のチラシを受け取ったのが、たまたまこのサークル。その時私にチラシを渡してくれたのが、さっき締めの挨拶をした亘先輩だった。
亘先輩はサークルの中では少数派の陽キャで、いつもみんなのまとめ役。
絶えずメンバー全体を見渡して、私みたいなモブにもいつもニッコリ笑って声をかけてくれた。
亘先輩がいてくれたから、私も不安なく大学生活を送ってこれたし、おしゃれにも気を遣う勇気を貰えた。
サークル活動が月に2回というのが、私にとっては絶妙なサイクル。
ほぼ2週間置きってことで、次に何を着て行こうか、アクセサリーはなんにしようかって、“大学デビュー”の私にじっくりと準備する時間を与えてくれた。
これがサークル活動が週何回…とかなら、多分“何着て行こうか考えるのがめんどくさい”ってなってたに違いない。

そんな亘先輩も今日を最後にサークル活動を引退。
卒業式まではまだ数ヶ月あるけど、なにしろマンモス大学。
学部が違えば、学内では滅多に会うこともない。

だから今夜、私は勇気を振り絞って感謝の気持ちを伝えるんだ。