会いたくなかった

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「お、幹事さんお疲れ〜」 私が真希の肩を抱えて駅に向かって歩き始めた時、後ろから声をかけられた。 振り返るとそこには、亘先輩ともう1人の4年生の男子の田村先輩が立っていた。 「お疲れ様でした」 そう言いながらちらっと、“感謝の気持ち”を伝えることが頭をよぎったけど、それは多分今じゃない。 隣に田村先輩もいるし、何しろ私の横には真希もいる。 モブの私ごときが亘先輩に伝えたいのは、あくまでも“感謝の言葉”で、愛の告白とかそんな大そうなもんじゃない。 でも真希に聞かれるのは、なんだか照れ臭い。 昔一度、亘先輩へ抱く“感謝の気持ち”を真希に伝えたことがある。その時、「先輩のこと好きなの?」と聞かれて全力で否定してる手前、聞かれるのはなんだか恥ずかしい。 ------ 「綾香、もしかしてそれって亘先輩のこと好きってことなんじゃないの〜?」 2年生の時のある日のこと。 私は真希とお茶しながら、かねてから思っていた亘先輩への“感謝の気持ち”をポロッと話してしまった時、真希はニヤニヤしながら私の顔を覗き込んだ。 「ち、違うよー。私ごときがそんな烏滸がましい。あ、あくまでも今私が大学生活を楽しめてるのは先輩のおかげってことで…」 「ふーん、そうなんだ。でもさ、マジで綾香みたいなピュアな子は、亘先輩みたいなチャラい男はやめといた方がいいよ」 「だから、違うってば」 ------ そう言ってその場を切り抜けた私。 それ以来、私の心の中は“違う”で統一している。 そう。違うの。 私のこの胸の奥にあるモヤモヤは、恋とかそんなんじゃない。 恋かも、なんて一度でも思ってしまったら、絶対ダメなんだ。
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