白い世界① 必要なのは合言葉

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白い世界① 必要なのは合言葉

 トンネルを抜けると、その先は白い雪国ならぬ、白い粉の異世界だった。  雪国ではないが、「白い」世界には違いない。  違いないのだが、全然違う。  あまりにも異様な、白い粉に振り回されている世界。  その誘惑と謎の世界だった。  ここは一体どこなのか、もしかすると未来なのか別次元なのか。  なぜ私がこんなところに迷い込んだのかは、わからない。  コンコン。  薄暗い地下駐車場の奥にあるドアを男がノックする。  小さな監視カメラとスピーカー越しに「誰だ」と、男の声。  「ミスターKの紹介で来た。今日は搬入の奴もいる。」  「搬入?見かけない顔だな、新顔か。…にしても今までと毛色が違う。」  ん?搬入って私のことか?毛色って何。明らかに髪の色って意味じゃないよね。  「かえって怪しまれないとの人選だったのかもしれん。だが危うかった。」  「ふむ。合言葉を。お歳暮が好きなのは誰だ?」  「聖母マリア。…と自称するウチの婆さんだ。」  「婆さんの名前は?」  「鬼婆。」  「よし、入れ。」  ええ?なんじゃそれ合言葉?しかも二段階認証みたいな?と内心ツッコミつつ黙っていると、想像より分厚いドアが重々しくゆっくりと開いた。  ドアの向こう側に足を踏み入れると、男はすぐ傍の螺旋階段を上るよう顎を上げて目線をやるのでそれに従う。  「何なの?」  「シッ。黙ってろ。」  婆さんが鬼婆と答えた男に小声で𠮟られた。    螺旋階段を上ると、懐中電灯を持った男が二人待機していた。辺りは暗く、懐中電灯が照らす先はトンネルのような暗い道。  その暗い道を懐中電灯の誘導でしばらく歩いて右に曲がる。  すると、見えてきたその先には「白い世界」が広がっていた。  それはもう、実に美味しそうな匂いと共に。
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