道となれ

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 偽善でもいい。これは貴方に託した小説だ。僕が追う夢の先に貴方がいれば嬉しい。貴方が諦めたことを悔いたとして、それを救うのが僕だったのなら、そして貴方が進めるような道となれたのなら、そう願いを込めて、汚い字のまま殴り書いた小説を弦に差し込んでコンビニへ向かった。  眩しすぎるコンビニの光の中へ足を踏み入れ、聞き慣れたメロディを耳にして初めて片目から涙が落ちた。冷えた店内でさえ僕の頭は冷やせない。熱くなった芯の芯。悔しさと自分の中にある暖かい気持ち。この腕では届かない範囲の人までもを救えるようなヒーローになりたい、そう思いながらくしゃくしゃになった支払い用紙をレジに置いた。 「ありがとうございました〜」  僕の夢は小説家。初めて褒めてもらったのは先生。忘れられない景色は賞状を手にしたあの壇上からの景色。大好きなのは大きくて優しい父さんの手。  僕の夢はヒーロー。惨めでもいい。  こんな深夜に迷惑かな、着信履歴を遡って父さんの番号を押す。 「あ、久しぶり」
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