吊橋

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吊橋

 ユエの国土は豊かで広大な森に覆われている。翼人たちは空を舞い、樹上の家に住むため、道を作ったり、街を作ったりしない。市場や畑も小規模で大々的に森を伐採することがほとんどないのだ。森と共に生きているというのが、彼らを形容するのに一番適した表現だろう。  彼らは部屋が点在するように建てられている大木を屋敷と呼ぶ。七緒は初めて見たとき、斥候の物見のようだと思った。だが、物見にしては視界が悪い。玄関にあたる場所は木の頂点にあり、色鮮やかな旗が数本立てられている。それがその木に翼人が住んでいるという目印だ。  ジージエの屋敷はひときわ大きく枝を広げた樫の木で、七緒の部屋は地上に一番近い木の枝にあった。見るからに新しく、窓にははめ殺しの格子がはめられ、戸は外からしか鍵の開閉ができないようになっていた。その錠は頑丈なもので、いくら友人になりたいと言っても人質であることは事実で監視されるのは当然だった。七緒に自由を与えることに反発もあるのだろう。だが、それが最低限の措置でしかないのはすぐに気付いた。日中は鍵が開いたままで、自由に出入りすることを許されたからだ。  ジージエは七緒を迎えるにあたり、屋敷にずいぶんとたくさん梯子をかけてくれていたが、翼のない七緒が翼人の屋敷で暮らすのは簡単ではなかった。最初のうちは不安定な枝の移動で足を滑らせ、屋敷の警備を取り仕切るシャーチーという焦げ茶の翼の男や、監視のものに助けられることもしばしばあった。だがそうかからずに彼女はそんな屋敷に慣れ、梯子は登るだけになった。慣れてしまえば枝から枝に跳び降りる方が早い。  主に空を舞う彼らは歩くのがあまり得意ではなく、地上のヒトと共存できるようでいて、遠い存在だった。翼人たちの身体は空を飛ぶために小柄で、骨は細く、鳥のように中空になっていて折れやすい。女性とはいえ、武術の心得もある七緒の手にかかれば、あっという間に彼らの骨は砕けてしまう。そんな七緒が宰相令嬢の護衛兼教育係になったことには大きな意義があった。  才色兼備で俊敏な七緒は瞬く間に翼人たちの信頼を勝ち得た。当然、侵略してきた有明の将軍の娘ということで反発もあったが、控えめな物言いや、宮仕えで身に着けた上品で優雅な物腰で反発するものにも徐々に受け入れられた。彼女は誠実で裏というものを感じさせない。その点が受け入れられた大きな要因の一つだろう。  二年の月日をかけて彼女はユエでの足場を安定したものにした。ひとえに彼女の努力の賜物だったが、その努力でもどうにもできないことが一つあった。それはわがままでお転婆なリーミンのことだ。リーミンはまだ十四歳。宰相令嬢だからと大人しく育つわけもない。 「お父様なんか大っ嫌い!」  その日もジージエとの大喧嘩の末、リーミンが窓から飛び出して行った。彼らには窓と戸の区別があまりない。飛び立てればどこでもかまわないようだ。七緒は密かにため息をつく。お転婆なお姫様との追いかけっこも慣れたものだ。 「すぐに連れ戻してまいります」 「いいえ、かまいません。七緒さん、リーミンの家出に少し付き合ってやってはもらえませんか? あの子のわがままは世間知らずという部分も影響しています。そろそろ外の世界を学ぶべきです」 「承知いたしました。すぐに追います」  七緒は袖括りの緒を引き締める。森の中では鎧直垂といえど、大きな袖は邪魔になる。 「落ち着き次第、いつもの方法で連絡いたします」  七緒はリーミンが飛び立った窓から飛び降りる。その窓は地上からゆうに五丈は離れており、並のヒトであれば肝を潰す高さだ。  七緒は耳元で風が鳴くのを聞きながら、木の先端を踏む。 「姫! お待ちください! 姫!」  七緒は木をしならせた反動で跳びながらリーミンを追って叫ぶ。翼人の飛行は魔法の力で補助をしているだけあってかなり速い。リーミンの鳶色の翼はハヤブサのそれにも似ていて群を抜いた速度を誇っていた。優雅でゆっくりした飛行を好むジージエとは全く趣が異なっている。七緒は類まれなる身体能力の高さと努力でリーミンと張り合う速度を身に着けた。だが、木から木へ飛び移り続けるという荒業を長時間続けられるはずもない。 「ついて来ないで!」  リーミンが負けじと叫び返してきた。だが、七緒がバランスを崩したのを見て取るや否や戻ってきて腕をつかんだ。 「大丈夫?」  七緒はリーミンの顔を見上げてふと笑う。 「助かりました。ありがとうございます、姫」 「別に。人間のくせに無茶するからよ」  リーミンは憮然と言ったが、七緒を太い木の枝に下ろしてくれた。バランスを崩すのはワザとだとそろそろ気付かれているのではないかと七緒は思っていたが、聞かれたことはなく、教えるつもりもない。翼のない七緒がリーミンを捕まえるのに一番効率的なのだから、当然だ。 「やっぱり追ってくるのはあなたで、お父様じゃないのね」  リーミンはため息交じりに言って、七緒の隣に腰を下ろす。 「お父様に叱られたいのですか?」  リーミンはぐっと言葉に詰まる。図星であることが少しばかり不憫だとは思う。 「そういうわけではないけど……」  リーミンは三つ編みにした長い赤毛をぐるぐると指でもてあそぶ。 「お父様がなにを考えているのかわからなくて……お父様は私のことなんてどうでもいいのかしら……」 「どうでもいいということはないはずです。どうでもよかったら私を止めるでしょう?」  七緒はそう言いながら少し乱れた髪を整える。髷を結っていてもリーミンを追いかけるとどうしても崩れてしまう。願掛けで髪を伸ばしているせいかもしれない。 「でも、そうですね……旦那様を困らせてみますか?」  リーミンはジージエによく似た赤い目を見開く。 「あなたがそんなことを言うとは思わなかったわ」  七緒は軽く肩をすくめる。 「私もあなたくらいのころに家出をしたので気持ちがわからないわけではないのです」 「そうなの?」 「はい」  家出の発端となった事件のことを思い出し、七緒はわずかに胸が痛んだ。思い出はいつも赤いもので塗りこめられている。 「まさか、家出の勢いでここに来たとか?」  七緒はリーミンに自分の立場と存在意義をあえて正確に教えていなかった。だが、まさかそんな反応をされると思わず、どうにか笑いをこらえる。 「違います。ちゃんと一度帰国してから勉学を修め、志願してこの国に来たのです」 「帰国? 家出で国まで出たの?」 「はい。この国にも立ち寄りました。二年ほど帰らなかったのです。帰宅した日に泣かれましたね、たくましいにもほどがあると」  泣いたのは母と爺やだけだ。父は冷たい目で見下しただけでなにも言わなかった。リーミンの笑顔が引きつっていることに彼女は気付く。温室育ちのリーミンには七緒の生い立ちなど想像することさえできないのだろう。 「私の話はこれくらいにしましょう。姫はどの程度の家出をご予定ですか?」  リーミンはすっと目を伏せる。気の強そうな短い眉がしゅんと下がった。 「なにも考えてなかったの。でも、今日は帰りたくない……」 「承知いたしました」  七緒は枝の上に立ち、太刀で周囲の枝を落とす。 「なにをしているの?」 「寝床になる場所を作っております。帰られないのであればまず、拠点となる寝床、次に水と食事です。季節は折よく秋。探せば木の実を拾えるでしょう」 「野宿するの?」 「姫はそのお覚悟もなく家出をされると?」  リーミンは言葉に詰まる。七緒が金の鋭い目で真っ直ぐに見つめると、リーミンは睨み返してきた。少し脅かせば帰ると泣き言をいうかと思ったが、存外やる気があるようだ。 「野宿くらいできるわ!」  七緒はふと笑って太刀の鞘から小柄を取り、リーミンに差し出す。 「そうでなくては」  七緒は手ごろな枝を二本渡す。 「箸を作ってください。簡単なので姫にもできます」  リーミンは七緒に教えられて不格好ながらもどうにか箸を削り出した。その間に七緒は寝床にできるように枝を組み、細い枝と木の葉を組み合わせてかごを作った。 「姫、このかご一杯に木の実を拾ってきてください。探せば簡単に見つかると思います」 「一緒に行ってくれないの?」 「私は水を汲みに参りますので。よもや、森が怖いのですか?」 「そ、そんなことないわ!」  危険な動物がいる森ではないし、木も鬱蒼と茂っているわけではない。だが、一人で行動するという経験の乏しいリーミンには難易度が高いのだろう。けれど、強がった手前引き下がることもできずに、リーミンは木の実を探して飛んで行った。  七緒は食べられる木の実がかごの半分も拾ってこられれば御の字だと思う。一晩くらい飢えて寝かせてもかまわないだろうが、あまり追い詰めてなにも得ないまま帰ると言われても困る。それほど拾ってこられなければ常に携帯している非常食を出そうと心に留める。  リーミンが完全に見えなくなってから、七緒は特別な紙に現在地と状況を書きつけて鳥の形に折る。 「イ・ジージエ宰相のもとへ」  手紙は羽ばたいて飛んで行った。その紙はユエではごくごく一般的な通信手段の一つだ。翼人たちはもっと多様な通信手段を持っているが、魔法の力を持たない七緒にも使えるのはその紙だけだった。正しく折って行き先を告げれば八割がた届く。うち二割は雨に降られたり、鳥に食べられたりして届かないこともあるが、長い距離でなければおおむね問題ない。  今日は雨も降りそうにないから温室育ちでわがままなお姫様を凹ませるにはちょうどいいと。次々指示を出していけばそうかからずにごねるだろうが、ここは屋敷ではない。少しくらい自分の手で色々するということを覚えた方がいいと七緒は思っている。リーミンの世間知らずは並ではない。ジージエが大切にし過ぎて屋敷からほとんど出さないから悪いのだ。  ジージエが過保護にするからリーミンは反発して飛び出す。ジージエが過保護なのは妻を亡くしているがゆえのものかもしれない。ジージエの娘の扱いはもっと幼い子供にするもののように見えてならなかった。  七緒は木を降りて川を探す。寝床を作った木からさほど遠くないところに川があった。ユエの川はどれも清浄で、そのまま飲んでも差し支えない。少し口に含んで確認し、いつも持ち歩いている革袋いっぱいに水を入れて肩に担ぐ。七緒は常に野宿の備えをしている。有明にいたころの習慣のようなものだ。戦に明け暮れる有明では将軍といえどいつ敗走するかわからない。それゆえに常に備えておくということが肝要だった。平和なユエでは不要な備えとわかってはいるが、習慣というものは簡単に抜けない。 元の場所に戻ったが、リーミンはまだ戻っていなかった。七緒は軽く地面を掘って石を並べ、乾いた枝を拾い集める。枯葉が多いから火をおこすのは簡単そうだ。運よく杉の枝と松ぼっくりも手に入った。これでかなり楽に火が大きくできる。  火をおこすか迷っているとリーミンがやっと戻ってきた。 「これでいい?」  リーミンがかごを差し出した。両手で持つのにちょうどいい大きさのかごはいっぱいになっている。 「はい。よく集められましたね」  七緒はかごの中から食べられる木の実を選別する。 「かごから出したものは食べられないの?」  七緒が次々と木の実を捨てるからリーミンが不満そうに言った。 「食すのに手間がかかります。あいにくと道具もありませんから焼いただけで食べられるものに限っています」  リーミンは予想よりも多く食べられる木の実を拾ってきていた。 「姫、あなたにしては上出来です。これを川に持って行って一度沈め、浮いたものを捨ててください。浮いたものには虫が入っていて食べられません」 「わかったわ」  リーミンは七緒に川の場所を確認して飛んで行った。入れ替わりにシャーチーが姿を見せた。少し前から来ていたが、リーミンが去るまで待っていたのだろう。 「早く来てくださって助かります」  七緒はふと息をつく。シャーチーは少し疲れたように笑って白髪の混じった茶色の髪をかき上げる。なにかと手を貸し、助けてくれるシャーチーだが、七緒とリーミンに振り回されてばかりいるのは事実だった。彼は本来ジージエの側近であり護衛で二人の守役ではない。ジージエが全幅の信頼を置く護衛を寄越したのは結局心配で仕方がないということだろう。 「リーミン様を野宿させるつもりですか? 七緒様」 「はい。出だしで最低条件を経験していただいた方が後々我慢がきくようになるのではないかと思ったのですが、反対ですか? シャーチー」  シャーチーは呆れた顔をしたがなにも言わなかった。七緒の地位はかなり特殊でシャーチーは意見できる立場にない。 「いいえ。いい機会だとは思います。リーミン様に見つからないよう警護をしますので必要な時にお呼びください。着替えと金です」 「着替えは預かっておいてもらえますか? 今は自力で家出をしていると思わせておいた方が姫のためになります」  七緒は金だけ受け取って懐にしまう。重さからしてかなり多いのはわかった。まったく過保護なものだ。 「わかりました。差し当たって必要なものは?」 「革袋があればください。夜間に水が足りなくなると一番困りますから」 「これでいいでしょうか?」  シャーチーが差し出したのは飲み口がついている小さいもので、野宿より短時間の外出に向いたものだった。だが、屋敷勤めのシャーチーにそんな気が回るはずもない。 「十分です。今夜は姫にかなり厳しいことを言うかもしれませんが、安全には十分に配慮しますので」 「七緒様、あなたの手腕は信用していますが、リーミン様の限界は簡単に来ます。それだけはお忘れなく」 「わかっています」  シャーチーは心配そうにしたが、急いで去って行った。リーミンが戻ってくるのが見えたのだろう。 「七緒、誰かいなかった?」  お姫様育ちでぼんやりしているとばかり思っていたが、意外と見えているらしい。 「気のせいです。怯えた心が木の影を人に見せたのでは?」  七緒がくと笑うとリーミンはむっと唇を尖らせる。 「七緒って二人きりだと感じ悪い」 「そんなことないですよ?」  不満げに見上げてくる赤い目がわずかに揺れる。七緒は軽く咳払いをして目をそらした。少しからかいが過ぎたようだ。大人げなかったと密かに反省する。 「木の実はどの程度残りましたか?」 「十個くらい流れて行ってしまったわ」  それでもかごの中には半分より多くの木の実が残っていた。二人で食べるには十分だろう。 「思ったよりも残りましたね。でもこれだけでは寂しいので山ぶどうを採りに参りましょう。あちらに木がありました」 「今度は一緒に行ってくれるのね」 「他行がおおよそ終わりましたので」  ここまで単独行動をさせていたのは連絡を円滑にするためで、ほかに理由はない。七緒が歩き出すとリーミンは歩いて追ってきた。だが、翼人は歩くことが得意ではない。リーミンも例外ではなく、あっという間に距離が開いていく。 「飛ばれてはいかがですか? 姫」  森の中とはいえ、リーミンが翼を広げて飛べないほど茂っていない。翼人たちは共存するために森の手入れを怠らないからだ。ユエの森は奥深くまで分け入っても不気味に茂っていることはほとんどない。七緒は長身で歩くのも速い。まだ子どもで身長が四尺もないリーミンが追い付けるはずもなかった。 「あなたと話すには歩いた方が都合がいいの。あなたがゆっくり歩けばいいんだわ!」  リーミンは息を切らせている。七緒はため息をついて足を止める。これだけ離れていたら飛ぶことで翼の分だけ離れても、その方が近いだろう。リーミンは羽ばたきの音が大きい方でもない。なにか理由があるのだろうか。お姫様の気まぐれはよくわからない。 「仕方ないですね」  七緒は追いついたリーミンを抱き上げる。 「あ、歩くわ!」 「あなたに合わせていたら日が暮れてしまいます。危険な動物はいませんが、夜の森は歩き回るべきではない。帰りは飛んでいただきますからね」 「わかったわ」  翼人は空を飛ぶ関係か、小柄で軽い。骨も鳥と同じように中空で軽く、痩せているものがほとんどだからだろう。足元の悪い森の中をあまり歩かせて怪我をされても困る。いくら宰相ジージエの信頼があっても七緒は外国人で人質だ。その七緒がリーミンに怪我をさせるというのは普通の教育係が怪我をさせるのとはわけが違う。必然、七緒もかなり慎重にはなっているのだが、まだ子どものリーミンは理解していない。それでいいと七緒は思っている。自分は国の犠牲になることを選んだ立場であり、リーミンは七緒が勝手に選んだ暇つぶしの相手でしかない。きれいな絹の服を着たわがままなお人形。それが彼女にとってのリーミンだ。そのはずだったが二年過ごして情が移ってきたのか近頃勝手が違う。 「ねぇ、七緒はどうして家出したの?」  その問いに七緒は目を伏せる。思い出はいつも血の匂いがする。 「あなたと似たようなものです。父と喧嘩をして飛び出しました。父は飽きれば帰宅すると思っていたようでしたし、護衛も付けられていました。その事になおさら腹が立って、護衛をまき、意地を張って帰りませんでした。今となってはなんで喧嘩をしたのかも覚えていません」  喧嘩が原因などではなかったが、話したくなかった。 「けれど、いい経験になったのは確かです。将軍の子として館の中にいたら民の暮らしを知ることはなかったでしょう」 「民の暮らし……そうね。私、なにも知らないわ」 「そうですね。姫はとんでもない世間知らずです」  七緒もリーミンがそうあるように仕向けていたが、そんなことはお首にも出さない。 「今日の七緒は厳しいわ」  リーミンは小さな唇をへの字にした。彼女がそうして感情を素直に表現するところが好ましいと七緒は思っている。 「姫が家出をなさる決意をされたのであれば厳しくお教えすることこそ私の責務と心得ております」 「そう。ねぇ、七緒はどうしてこの国に来たの? 志願したって言っていたわよね?」  好んで人質になるとはリーミンでも信じていなかったらしい。表向きには七緒が志願したことになっていたからリーミンの疑問は自然なものだ。 有明で人質になっているフェイ王子をリーミンは兄のように慕っている。それゆえにフェイが国王の信頼と委任で泣く泣く人質になったことをリーミンは知っていた。だから、七緒がひどく異質に思えるのだろう。七緒はそれらしい理由をでっちあげることにした。真実は知らない方がいいことも多い。 「そうですね……私が将軍の末娘で程よい身分だったという側面もありますが、志願したのはあなた方翼人がどうして飛ぶのか知りたかったからかもしれません。地上を歩く私からしたら美しい翼をひるがえして空高く舞い飛ぶ姿が眩しかったのです」  七緒は家出をした際、ユエにも立ち寄っていた。まだ互いに干渉することさえなかった平和な時代。翼人たちの舞い飛ぶ姿が眩しいと思ったのはその時だ。 「どうして飛ぶのか……どうしてかしら? 考えたこともなかった。私たちは歩くより先に飛ぶようになるの。だから飛ぶのが当たり前で、理由なんかないかもしれないわね。あなたたちが歩くのと同じよ」  リーミンは鳶色の大きな翼をもぞもぞと動かす。彼らの翼はたたんだ状態でも頭より高い位置まであるから、七緒の視線は自然翼に行くことが多い。 「七緒は美しい翼って言ったけど、私の翼もきれいだと思う?」 「きれいですよ。鷹のような色合いでいて、ハヤブサのように風を掴まれる。姫はご自身の翼がお嫌いですか?」  リーミンは困ったように笑って目を伏せる。 「嫌いってわけじゃないけど、お父様のようにきれいな白い翼がよかったの。こんな猛禽類のような翼じゃなくてね。髪だって癖のある赤毛でかわいいとは思えないわ。肌だって黒いし……」  ジージエは癖のある金髪で白鳥のような白い翼を持っている。色素が薄いのか色白で、いかにも高貴な翼人といった風情だ。だが、リーミンは赤毛で鳶色の翼をしており、肌も褐色だ。後姿は親子に見えない。亡き母に似たのだろうが、時折あのジージエ宰相の一人娘なのにみすぼらしいと陰口を言われていることがある。そのせいでリーミンは自分の容姿にあまり自信がないようだった。 「姫、私はあなたのそば近く仕えていますが、人間です。しかも黒髪で金の目をしていて、その上女なのに男の形をしている。それが嫌だと思いますか?」  翼人に黒髪のものはいない。背が高く、翼のない七緒は当然ながらかなり目立つ。衣装も有明のものだからなおさらだ。翼人とヒトの間にはまだ埋めがたい溝があり、七緒が自由に闊歩していることを快く思わないものもまだ多い。 「それは……」 「正直に仰ってくださってかまいません」  リーミンは七緒を見上げて口を開いた。 「目立つとは思うけど、嫌だって思ったことはないわ。私、七緒が好きだもの」  七緒はふと笑う。劣等感を抱えて生きるのが楽ではないことを彼女はよく知っている。莫迦らしいとすべてをはねのける強さは簡単に身に着けられるものではないが、リーミンには高慢なお姫様のままでいてほしいと七緒は密かに思っている。自分が与えられず、奪われたものをすべて持っているリーミンが愛おしく、憎らしかった。だからこそ、そのままでいてほしい。 「そういうことです。好きな相手であれば、好ましい、かわいらしいと思うもので、欠点だと思うことはありません。姫の陰口を言うものは嫉妬しているだけです。気にされることはない。姫はとてもおかわいらしいですよ」  七緒がじっと見つめるとリーミンはぱっと頬を染めた。 「あなたってそういうところが狡いのよ。あと少しで恋をするところだったわ」 「おや、あと一押しでしたか」  七緒はくすくすと笑う。翼人は異性同性関係なく恋をする。女性同士でも子を生せ、男性同士で結婚した場合は養子を取ることが当たり前だからだろう。子を持たない選択をするカップルも多く、独り身であることも珍しくない。  七緒自身は結婚する気もさらさらなく、恋愛する気さえない。そう言ってやれば夢見がちなリーミンが喜ぶと知っているからそうしただけだ。 「さ、着きましたよ」  七緒はリーミンを下ろした。そこには山ブドウの木があり、たくさん実っている。高い位置に実っているものをリーミンに収穫してもらえば、そこそこの量になるだろう。 「なんでここにあるって知ってたの?」 「川を探しているときに見つけました」  七緒が熟れた実を選別しながら摘み始めるとリーミンも慌てて実を摘み始めた。 「ねぇ、本当にあの木の上で寝るの?」  リーミンの声が不安げに揺れている。七緒は漏れそうになった笑いをかみ殺した。やはり強がって見せても怖いのだろう。 「地上の方がお好みでしたか?」 「そうじゃなくて!」 「怖気づいたんですか?」 「怖気づいてなんかないわ!」  間髪入れずに返された言葉に七緒は小さく笑う。空が少し暗くなってきたから心細くなってきたのだろう。まだ十四。心細くなるのもおかしくはない。これまでは飛び出しても暗くなる前に連れ帰っていた。だから、なおさらだろう。 「七緒が家出したのは何歳の時?」 「十二になったばかりのころだったかと。今となっては無謀だったと思います」 「それは将軍がたくましすぎるって嘆くはずね」  その言葉に七緒は苦笑する。たくましすぎると嘆いたのは父ではない、亡き爺やだ。父が言ったと誤解されるような話し方をしたのは父にそう言われたかったからだろうか。七緒自身にもわからなかった。 「危険なことはなかったの?」 「何度もありましたよ。細い道で転落したり、盗賊に目をつけられたり……男として育てられていなかったら死んでいたと思います」 「なんであなたは男として育てられたの?」 「なんで……」  これまで聞かれたことがなく話していなかったが、今日なら話してもいいような気がした。 「私は末娘です。姉が三人。将軍家では男子がなければ不都合なので、父は焦っていたのでしょう。腹違いの子にも男子はいませんでした。この国と違って有明は男性主体ですから女では後継になれないのです。そのため、生まれてすぐに女であることは伏せられ、跡継ぎの男子として育てられました。父に似た凛々しい顔立ちをしていたばかりに周囲にも気付かれることはなく、十五で元服……成人の儀式まで済んでしまいました。私自身も月の印があるまで自分が男だと信じ切っていたのです。母が娘なのに無体なことをすると父をなじる意味を理解しませんでした。母は唯一私を女として扱っていたので女の嗜みを叩きこまれもしました。けれど結局、女としての自覚は抜け落ちたままで、母は嘆きました。十六のとき、私が女だと明るみに出た後は父に失策だったとなじられる始末。十七で両親の言うことが莫迦らしいと切り捨て、私は私らしく生きることにしました。こうしている方が自然であるなら私は男でも女でもかまわない。そう思っています」  七緒は自身が乱世ゆえに歪められた存在だということはわかっていたが、気にするのも莫迦らしいと思っている。どうせ己が運命は己のものではない。 「そう。なら、なんで私を姫って呼ぶの?」  リーミンを姫と呼ぶのは七緒だけだ。性別での区別があいまいなユエではひどく古臭く、形骸化した言葉でもある。ユエの国王は女性だが、女王という呼称を使うのは対外的なものだった。姫という呼び名は七緒にとって一種の線引きではあったが、本人に言うつもりはない。 「称号だからです。私はあなたの護衛兼教育係である以前に外国人ですから」 「そう……家出している間だけでもいいからリーミンって呼んでくれる?」 「かまいませんよ、リーミン。お友達ごっこにお付き合いいたします」  リーミンは不満げに唇を尖らせる。 「あなたってそういうことも隠さないわよね。友達になってくれるって言うところじゃないの?」 「私はあなたより六つ上ですし、種族も違えば立場も違う。こうしてこれまで話さなかったことを話したからと急に友達にはなれないのです。だから、まず友達ごっこから始めるのが妥当と思います」 「あなたって本当にお堅い……」  リーミンは大袈裟にため息をつく。 「いいわ。いつか友達ごっこじゃなくなるとうれしい」  七緒はリーミンの真っ直ぐさがひどく眩しいと思う。友達。その言葉が自分にはひどく不釣り合いな気がした。 「さて、これくらいにしましょう。戻りますよ」 「ええ」  リーミンは軽く羽ばたき、七緒の少し上を飛ぶ。結局そこにいるのであれば、行きはなぜ意地を張ったのだろう。やはりリーミンの考えることはわからない。わがままお姫様だ。 「リーミン、あなたは母君のことを覚えていますか?」 「当然でしょう。なんで急にそんなことを聞くの?」 「いえ、一度も話されているのを聞いたことがないと思いまして」  リーミンは悲しそうに笑う。リーミンの母チュンリンは五年前に病死した。七緒がこの国に来たのは二年前でチュンリンのことを知らなかった。 「話せる相手がいないの……」  リーミンは寂しそうに髪に飾った鳶色の羽根を撫でる。その羽根はジージエが髪に飾っているものとよく似ていた。チュンリンの遺したものなのだろう。 「お父様はお母様の話をすると悲しそうな顔をするし、シャーチーは心配そうにする。そんな顔をしてほしいわけじゃない。ただ、お母様の話をしたいだけなのに……だから話さない。それだけのことよ」 「そうでしたか……リーミン、あなたの母君の話を聞かせてください。きっと素敵な方だったのでしょう?」 「そうよ。とてもやさしくて、いつもいい香りがしたの。背はお父様よりずっと小さかったけど、がっしりしていたわ」  リーミンは懐かしそうにほわりと笑う。 「母君が赤毛だったのですか?」 「ええ。翼も同じ。でも、目はきれいな青だった。海の青に似ていたの。いつもにこにこ笑っていて、病気になっても笑ってた……苦しくても、辛くても笑っている人だったの。私を悲しませないためだったのかも。だから私、お母様の笑顔しか覚えていないの。やさしすぎたから早く死んでしまったのかしらね。お母さまが死んだ日からお父様の時は止まったままで、よくわからないの」  七緒はリーミンとジージエの親子喧嘩が絶えないのは根本的にすれ違っているせいではないかと思っていたが、予想通りのようだ。ジージエは妻を亡くした悲しみと、幼くして母を亡くした娘を哀れむあまり本当の意味で我が子を見ていない。ジージエが見ているリーミンはまだ九歳で泣きじゃくる姿のままなのだろう。けれど、リーミンは悲しみを乗り越え、成長している。だから、止まったままのジージエとぶつかってしまうのだろう。  だが、ジージエはリーミンの家出を成長の一環ととらえ進もうとし始めた。その思いを無駄にしてはならないと七緒は思う。まだ年若い自分が何をしてやれるかはわからない。せめてリーミンに寄り添おうと思った。リーミンも自分と同じように迷いながら歩んでいる。絹の服を着た人形ではない。 「旦那様はよくわからない方だと私も思います」 「七緒もそうなの?」 「はい。あなたと同じ赤い目なのにじっと見つめられると全部見透かされてしまうような気がします」  ジージエは話すのが特別ゆっくりで、そのとろりとした赤い目でじっと見てくることが多い。そんな眼差しを注いで来るものは有明にはいなかった。リーミンが不意にくすくすと笑う。 「あれ、本当はなにも見えていないのよ。お父様は力がほとんどないの。だからあるように見せかけているだけ。おかしいわよね」  翼人たちは大なり小なり魔法の力を持っている。力が強いものであれば心を読んだり、未来を見たりすることもあるらしい。ただ、心を読む行為は失礼に当たるため、避けるもののようだった。ジージエはその力がないに等しく、自身の飛行の補助さえできないらしい。だが、高い政治能力で今の地位を得ている。おっとりとしてやさしげな雰囲気をまとってはいるがただものではないのも事実だ。 「あなたたちの間では力が弱いのは恥ずかしいことなのですか?」 「恥ずかしいっていうか、見下されるの。お父様は自分の飛行の補助もできないほどだから、翼人としては落ちこぼれって言われてる。お父様はそれでずいぶん苦労されたみたいだけど、今の地位に就かれているし、みんな知っていることなのだから力のあるふりをする意味なんかないんじゃないかって思うの」  確かに七緒もかなり早い段階で飛べない宰相とうわさを聞いた。だが、ジージエは力が無くとも優雅に飛んでいて力がないとは思わなかった。 「そうですね……リーミン、例えば私が太刀を持っているのは見せかけで全然戦えないとします。私が弱いと誰もが知っている。でも、私を知らないものが帯刀した私を見たらどう思うかわかりますか?」 「強いかもしれないから警戒するわね。実際にやり合わない限り実力はわからないもの」 「そう言うことです。たとえこけおどしでも意味があります。特に旦那様のように高い地位があればなおさらです。力が弱いとわかる状態でいては見下され、突然殺されてしまうかもしれない。旦那様のような方が殺されれば戦が起きます。そうならないためにも力が強いふりというのは大切なのです」 「そういうものなのね」  リーミンはゆっくりと答えた。考えているのだろう。 「もっとも、そのふりに説得力がなければ価値はないのですが、旦那様のふりは完璧だと思います。見破られた場合の備えもしておられるようですし。事実、私も力がないとうわさを聞いていましたが、信じていませんでした」 「お父様の外の顔って全然違うものね」  リーミンはふと息をつく。ジージエは週の半分は在宅で働いているからリーミンも宰相としての顔は折に触れて目にしていた。その横顔は峻厳で普段のただやさしく頼りない父のものではない。  川に差し掛かり、七緒は山ブドウを洗い、革袋を満たす。 「リーミン、水と山ブドウを持って行ってもらえますか?」 「ええ」  七緒はそれらをリーミンに託し、程よい大きさで平らな石を拾い、きれいに洗う。 「石なんか何に使うの?」 「石を熱して木の実を焼くのです。調理道具などありませんからね」 「家出って簡単じゃないのね」  リーミンが小さくため息をついた。七緒はくすりと笑う。 「そうですよ。屋敷にはなんでも揃っていますが、ここにはなにもありませんから」  リーミンは唇をへの字にしたがなにも言わなかった。元の場所に戻り、七緒は火をおこす。彼女は火をおこす道具も常に持ち歩いていた。刃物と革袋、火打石があればおおよそ生き延びられると七緒は思っている。慣れた手つきで火を大きくし、太い枝を組む。 「あなたってなんでもできるのね。人間はみんなそうなの?」  七緒は細い顎に指を添え、小首を傾げる。自分以外にこれほどの道具を常に持ち歩いているものはいなかった。 「私が変わっているのは確かだと思います。ユエと有明では都市の発展具合はさほど変わりませんから、本来であれば必要ありません」 「やっぱり家出をしたから?」 「そうですね。ある程度教えられもしましたが、実戦的なものはそのころに」  七緒は火の番をしながら石でクルミを割る。 「リーミンもやってみますか?」 「できるかしら?」 「簡単ですよ。左手で押さえて、この筋に沿って叩くときれいに割れます」  リーミンは七緒に教えられながら、石でクルミを恐る恐る叩く。一回では割れなかったが、二度、三度と叩くとクルミはきれいに半分に割れた。 「できたわ!」  リーミンはクルミの実を殻から取り出してうれしそうに笑う。 「お上手です」 二人がクルミを割り終えるころには火が落ち着いて程よい熾火になっていた。 「火が消えちゃってるわ」 「料理をするにはこれでいいのです」  七緒は熾火の中央に先ほど持ってきた石を据え、内側にクルミ、周囲に椎の実を置く。 「ぱちりと爆ぜる音がしたら食べごろです。それまで山ブドウを食べていましょう。そろそろお腹がおすきでしょう?」 「そういえばそうね。こんなに動き回ったのは初めて」  リーミンは山ブドウを口にする。七緒はリーミンが山ブドウの独特の風味を嫌うのではないかと思っていたが、気にする様子はない。ユエの果物は癖の強いものが元々多い。そのせいだろうか。 「疲れていませんか?」 「少しだけ。でもきっと七緒ほどじゃないわ。人間は体が重くて疲れやすいって聞いているもの」 「それは否定できませんね」  七緒は軽く肩をすくめる。翼人は持久力があり疲れにくい体質をしている。大きな翼を操って暮らしているから小柄で細身と言えど、筋肉質だからだろう。  七緒は箸でクルミを裏返し、椎の実を転がす。もう少しかかりそうだ。 「香ばしい香りがして来たわね」 「そうですね」  ややあってぱちりと爆ぜる音がした。音はぱちぱちと続いていく。 「焼けたの?」 「はい」  七緒はしっかり殻が割れているものを選んで朴の木の葉に乗せる。クルミもよさそうだ。お姫様育ちのリーミンに腹を壊されては困ると七緒は慎重に火が通っているものを選ぶ。 「さ、どうぞ。割れているところから殻をむいて食べてください。熱いですから火傷しないように」 「ありがとう」  リーミンは受け取った葉を膝に置き、椎の実の殻をむく。少し苦戦していたが、ほどなくして白い実を取り出した。 「むいたら見覚えがあるわ」 「そうでしょうね」  椎の実は翼人の主食の一つでもある。リーミンは殻の付いた状態を知らなかったらしい。 「椎の実だと知らずに拾ってきたのですか?」  リーミンは少し恥ずかしそうに頷く。上げ膳据え膳のお姫様であれば仕方のないことかもしれないが、知る機会はいくらでもあっただろう。 「知らないことは知ればいいのです。恥じる必要はありません。これで一つ賢くなれましたね」 「そうね。七緒ってやさしいのか厳しいのかわからないわ」 「どちらでしょうね」  七緒はくすりと笑って、椎の実を食べる。焼いただけの椎の実はひどく素朴な味がする。木の実で腹を満たして、火の始末をし、樹上に戻る。 「もう真っ暗ね」  空には星が瞬いている。七緒はこうして星を見るのはずいぶん久しぶりだった。有明にいたころはなにかと屋根に上って星を見ていた。だが、ユエでは夜になると部屋から出られなくなり、窓には板がはめ込まれる。ユエの夜空は見られない。 「そうですね」 「お父様、心配しているかしら」 「心配しているでしょうね」  七緒は寂しそうなリーミンの言葉に付き合うのが少し面倒になっていた。 「ねぇ、七緒、私の家出に荷担してあなたの立場が悪くならない?」  リーミンの問いに七緒は内心驚く。世間知らずの子どものリーミンがそんなことを慮れるとは思わなかった。 「悪くなるかもしれませんが、追い出されることはないので大丈夫ですよ」  ジージエの指示でこうしているのだから立場が悪くなることなどありえないが、その事を気取られたくはない。 「そう。ならよかった」  リーミンはほっと息をついて横になる。 「あなたがいなくなったら嫌だもの」  七緒はなにも言わずに太刀を腰から外し、横になる。なんと答えるべきかわからなかった。不意とリーミンが翼で彼女の身体を覆った。 「なにを?」 「寒いでしょう? あなたには翼がないもの。翼の中ならあたたかいわ」  確かに翼の中はあたたかい。彼らが掛けるものを必要としないのも当然だ。この国に来た初日、寝具の話で延々に噛み合わず、持ってきた着物を何枚も被って寝る羽目になったのは今もよく覚えている。 「ありがとうございます……」  リーミンの翼の中がこれほど安らぐとは知らなかった。 「おやすみなさい、七緒」 「おやすみなさい、リーミン」  リーミンはすぐに眠りに落ちた。慣れないことをしたから疲れ切っているのだろう。七緒はリーミンをやさしく抱きしめて目を閉じる。この森には危険な動物がおらず、樹上であればなお安全だ。シャーチーもどこかで見張ってくれていると思えば安心できる。七緒もすぐにまどろんだ。
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