第二話 さようなら、日常

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――――でも。  それだけなら、まだ「いかにもやりそう」ですむけれど。  そこに、「一緒にやるか?」なんてお誘いが入るなら、話は別だ。 「無理。興味ないから。じゃあ」 「いや、待てよ」  ばっさりと切り捨てて、とっとと帰ろうと身を翻そうとした瞬間、再びぐいっと勢いよく手首を引かれる。  私はうまくバランスを取って体制を立て直し、そのまま振り向いてじとっと灯点頃を見た。 「……さっきから痛いって言ってるんだけど」 「他に言うことはないか?」  見下ろしてくる灯点頃の顔には前髪が影を落として、瞳がわずかに(くら)い。 「……他って?」 「一年ぶりの相棒に対して、ぱっと話して『じゃあ』の一言で終わらせるのか?」 「なら、他に何を話すの?」  感情のない目で見つめる私と、少し細まった瞳で睨みおろす灯点頃。  しばらくじりじりと空気が焦げ付くような睨み合いが続いてから、灯点頃がはあーっとため息をついた。 「あー……分かった、物黎がそう言うんなら、考えはある」 「は、」  ものすごく嫌な予感がして聞き返そうとするより先に、パッと灯点頃のほうが手を離した。 「せっかく久しぶりに会えたんだ、また逃がすような真似はしない。……あとでまた来る」  ニッと笑い、私の返事や反応よりも先に、背を向けて屋上から出ていく。  その背中を、私はしばらく呆然と見つめて……それから、思わずその場にしゃがみこんだ。  思った以上に、最悪だ。  あの顔の灯点頃は、本当にヤバい。
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