OPENING

1/1
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

OPENING

 それは、輝く真夜中。  高層ビルがにょきにょきと背を伸ばす、とある大都市の中心街。  地上をずっと下に見下ろす巨大なネオン文字の、真ん中の一文字の上に一人の少年が立っていた。  片手には白い狐面。  綺麗に整った顔立ちに浮かぶのは、不敵な笑顔。  一つに結った髪を、夜の強い風が吹きさらす。  高い位置にある見慣れたネオンに、地上でざわめく人は見向きもしない。ましてそんな細い足場に、子どもが立っているとは誰も思わないだろう。  反対に、少年は夜の町並みとうごめく人ごみをじっと見すえていた。  ゆっくりと唇が動き、紡ぎ出された声が、風の中で鮮やかに響く。 「任務、終わったよ。で、この後はどこ行けばいいんだっけ? ……ああ。そうだそうだ」  くすりと、唇からもれるかすかな笑い声。  切れ長の美しい瞳が、すうっと細められる。  ささやくようにボリュームを落とした声。 「だーいじょうぶ、ちゃんと覚えてるよ。……じゃ、俺もう行くねー」  細めたままの目で、すぐ下に広がる夜の街を見下ろし。  ふわりと、その足がネオンサインから離れた。  髪と振袖がひるがえる。  ぞっとするほど美しい紅い月が、ただ夜の空に飾られていた。 【  NOW  LOADING ...】
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!