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「はい」
しんと静まり返って、ほんの少し身動きしただけでも音が響いてしまいそうな体育館に流れた、綺麗でほどよく低い声。
夜の深い影のような。冴えわたった月のような。
その声を聞いた瞬間、頭から何もかもが抜け落ちた。
うそ。待って。
壇上に、転校生らしき男の子がゆっくりと上ってくる。
その顔を見た瞬間、
私の心臓と呼吸音は、完全に、凍りついた。
目が、釘付けになる。離せない。逸らせない。
まっすぐに伸ばした背。軽やかな歩き方。束ねた髪が、鮮やかに揺れる。
息が止まる。心臓が詰まる。
神様が人間のパーツを適当に考えていて、そのままうっかり本気になってしまったと言われたら信じられる、アニメから抜け出してきたような美しさ。
歩き方、身にまとうオーラまで、全部含めてあまりに神々しい。
凍りついていた心臓が、やっと、ドクンと……跳ねた。
ヤバい。
女子の歓声が大きくなるのを、私の耳にガラスが張られてしまったみたいに、どこか遠く深くで聴く。
ヤバい。これは、ヤバい。
甘く見ていた。何も考えてなかった。
少しも、予想していなかったから……逃げ道はなかった。
ドクン。どくん。
ヤバい。ヤバい。ヤバい。
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