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何人野口を重ねても
頭の上から笑い声が下りてきた。
ふふふとも、あははとも言えない声に、夢中で動かしていた舌を止める。顔をあげると、開いた足の間に座り込む私を、笑い声の発生源が見下ろしていた。幼さの残る頬の丸みが、うっすらと上気してピンク色になっている。
「笑うシチュエーションじゃなくない?」
言いながら、色んな液体汚れた口元を手の甲で拭う。
「だってなんかおかしくって」
くすくす笑いながら、彼女はソファーにゆったりと背中を預けた。そんな彼女を見上げ、白い太腿に頬をすりつける。すべすべな皮膚と、その下のもちもちと柔らかな肉が頬に気持ち良い。本人は気にしているこの少しふっくらとした足が、どれだけ私の劣情を誘うか。短いスカート履いているのに、全然頓着しないものだからたまらない。
むき出しになっているのに教室の中では触れられない。だからこそ余計に目を惹くのだ。
「気持ちよくない?」
「気持ちよくない訳じゃないけどぉ、なんか変な感じ」
「もう何度もしてるじゃん。慣れるでしょ」
「えー、何度されても慣れないよぉ」
そう言って彼女はふふっと吐息を漏らすと、私の髪を撫でた。梳くような動きで、私の髪を整えていく。その優しい手つきにたまらなくなり、頭を下げるとまた舌を動かした。
「彼はあんまシてくんないの?」
股間に顔を埋めながら喋ったせいで、声がくぐもる。振動がくすぐったいのか、彼女が「そこで喋らないで」と笑い交じりに吐息を漏らした。
「クンニは、ぁっ、きら、あっ、いなんだ……ってぇ」
「クンニされるの好きなのにね」
「あっ、ンん、だからそこ、でぇ、ゃ、んっ」
柔らかい肉が、舌先で形を変える。ぬちゃり、と音がして奥から粘度の高い液体があふれ出してきた。こぼさないように舌先で掬い、唾液と絡めてクリトリスへ運ぶ。先が触れた瞬間に、彼女の腰が大きく跳ねた。
「あぁっ、やっ、ン、そこきもち、いぃ」
「気持ちいいんじゃん」
「きもちよくなっ、いなんて、いってな……ンっ」
ぷっくりと膨らみを増していくクリトリスを舌先で押しつぶす。濡れたそこはぷちゅりと逃げるように右に逸れ左に逸れ、私は逃げ惑う芯を舌先で追いかけた。
「だ、めぇっ! それ、すぐイ、っちゃう、ンん、あっあっ、ぁうっん……っっ!」
彼女が大きく息を吸い込んだ。と、同時に舌の動きを止める。
「えっ、やぁ、なん、でぇ」
彼女は行き場のなくなった昂りに戸惑い、無意識に腰を揺らした。高みを求める腰を抑えつけ、花芯のすぐ下から溢れる蜜を舐めとる。そのままじゅるじゅる音を立て、蜜を吸い出した。
「やっ、音立てちゃぁ、だめ…ぇ」
「さっきからやだーとかだめーとかばっかだなぁ」
「ち、がぅのっ、ほんとは、だめじゃ……んンぅッ」
「やっぱり気持ちよくない?」
ぷっくりと膨らんだ芯を舌で弾くと、彼女の身体が大きく跳ねた。
「あッ、ゃだぁ……ぅンっ、いじわるしないでぇ」
「イきたい?」
私の問いかけに、必死でこくこく頷く。潤む瞳に満足した私は、見えるように大きく足を開くと、限界まで舌先を伸ばした。
「ちゃんと見てて」
「わかったからぁ、はやく、んっ」
足をあげるように促すと自ら太ももを抱え、早く早くとねだった。その中心はグロテスクに赤く濡れそぼっている。理性を失いそうになる程の光景と立ち昇る色香に、ぐらりと視界が歪んだ気がした。
軽く頭を振って、まずはたっぷり唾液を撫で付ける。初めは丁寧にゆっくりと、柔らかく撫でるように。だんだんと声が高くなってきたら、舌先を硬くし、同時に吸い付く。
「あぁっッ、それ、すごっんっんン、ぁ、ゃあっ」
声の間隔がどんどんと短くなっていく。視界に映る茂みの先で、波打つ下腹が汗でつやつやと光っていた。更に視線をあげると、ホックが外れて肩に引っかかっているだけのブラジャーが見える。ブラの隙間からぷっくりと膨らんだ乳首が誘うように揺れた。片手を伸ばして、ぴん、と弾く。
「んぁッ! おっぱ、い、もぉっ、ぁあっ、は、ふぁ」
普段は乳首はあまり感じない。しかしこうなってしまえば、どこを触っても快感に繋がるようだ。
「ぁ、んぅっ! まって、そのままシたら、でちゃ、ンッ」
乳房の更に上から声がする。顔を隠すように口元に添えられた片手は、力が入りすぎて白くなっていた。視線をあげれば、うるんだ瞳でこちらを見る彼女と目が合うだろう。しかし私は視線を下げると、目の前の肉に向き合う。
ぬるりと濡れた、赤とピンクの間のような色。彼女の体の中で、一番美しい部分。
キスをするのは、こっちだけだと決めたじゃないか。
そう言い聞かせ、熱くなった舌を絡める。
「あっ、あっ、んンゃあっ!」
たっぷりと唾液で濡らした舌で上下にこすりあげる。上から、大きく息を吸う音がした。今度はそのまま舌を動かし続ける。直後、びくんッ、と体が震えた。
「〜〜〜〜ッッ!!」
噴き出す雫が、ぴたりとくっついた私の顎を濡らす。ぷしゃ、と出たのは潮というのだろうか。中を覗き込むように指で広げ、穴に舌先を差し込んでみる。
「あっあっあっ、まって、まだイってる、からぁ! でる、でちゃっ……ンんっ!」
入り口を刺激するたび、奥から液体が出てきた。顔があっという間にびしゃびしゃに濡れていく。繰り返すうちに、そこははくはくと口を動かし続けるだけになった。
「ふぅ……んン……は、んっ」
快感の余韻に体を預ける彼女から離れる。立ち上がって、ソファーに体を預ける彼女を見下ろした。
アダルトビデオのように大きく声をあげたりしない。しかし一気にピンク色になった体が、噴き出すような全身の汗が、波打つ性器が彼女が達した事を物語っていた。
「んっ、は、ぁ……ねぇ、もうおしまい……?」
女の匂いを濃くした彼女の体を愛す方法を、これ以上の行為を、私は知らない。別に知識として知らない訳ではない。しかし、性器の奥に触れるのは躊躇われた。
そこに深く触れる事が出来ない己の体と、
容易に触れてしまえる男への、少しの嫉妬だ。
行き場のない興奮を断ち切るように彼女から目を逸らす。
そばに脱ぎ捨てたブレザーを手繰り寄せ、内ポケットからポチ袋を取り出した。うつろな目をした彼女の視線が、私の動きを追いかける。
「ありがとう」
そういってポチ袋を渡す。彼女は少しだけ体を浮かせると、「どういたしまして」と言って、私の手からポチ袋を受け取った。
「あは、時給五千円やば~い」
中身を確認した彼女がへらりと笑う。
「体売る金額としては安いけどね」
「え~? でもオジサンだったらやだけどさぁ、友達だから全然いいよぉ」
「普通は友達にクンニさせないんだよ」
彼女は「いじわる」と言いながら頬を膨らませた。指先にポチ袋を挟んだまま、器用にブラジャーのホックをつける。
もう少し肌を見ていたい気もしたが、口に出すのは躊躇われた。気持ちよさそうにしている姿を見ているとついついイって欲しくてたまらなくなって、いつも必死になってしまう。
「今度はなに買うの?」
「ん~どうしよっかなぁ、貯金? かなぁ」
「貯金って、ほしいものあるとか?」
「んーん、でも来月クリスマスじゃん」
彼氏とのデートで使おうかなぁ。そう言った彼女の表情からは、今までしていた行為の余韻などすっかり消え去っている。
「でもさ、最近彼氏とえっちするのやんなってきちゃったんだぁ」
「なんで? 冷めた?」
彼女は首を振ると、困ったような顔で笑った。
「なんでお金くれないのにえっちしなきゃいけないんだろうって」
ウェットティッシュを持つ私が再度跪くと、彼女は自然と脚を開いた。先ほどまで真っ赤に染まっていた内側は、今は落ち着きを取り戻し、サーモンピンクになっている。
「つめたー!」
「我慢してよ、べちゃべちゃのままパンツ履きたくないでしょ?」
「えへへ、はぁい」
綺麗に拭き終わると、足首にひっかかっていたパンツを履かせる。彼女は最後までされるがまま、満足そうな顔で私を見下ろしていた。
「そういうこともしてくれないんだよねぇ」
それはそうだろう。ただセックスしたい盛りの男子と私を一緒にしないで欲しい。私の方がずっと大事にしている。それを彼女もわかっているような事を言うのに、それでも私は彼女とは付き合えない。
ふと「彼氏ができたんだ」と言われた日のことを思い出す。たった三ヶ月前の事だ。いつか来る事だとは分かりつつも、まさかそれが夏休みに入ってすぐに起こるとは思っていなかった。
「ねぇ、バイトしない?」
自暴自棄だったんだろう。一番近くにいれないなら、友達じゃなくなったっていい。そんな気持ちから提案した事だった。ダメで元々、友達の縁なんか切られたって良かった。
でも。
「いいよ」
彼女はこの馬鹿げた関係に乗った。正直に言って、嬉しかった。その瞬間は。
徐々に変わっていく関係に戸惑っているのは私の方で、彼女はあまり気にしていないようだった。望んだのは私で、提案したのも私で、主導権を握っているのも消費者である私の方のはずなのに。
「私がお金貰わないとえっちできない体になったら、責任とってよね」
責任を取らせるつもりがない、取らせてもくれないであろう彼女の悪気ない言葉に、「そうだね」と短く返す。
きっと私の行為も、好意も、彼女の意には介さない。
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