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人の行き来
隣家に
ありがたいことに拓殖昭成大学や付属小学校、中学校の分校が誘致されたことにより駅が再開発されてアウトレットだけでなく病院まで出来るようになってホントつい数年前まで何もない山の麓にある街だったとはいえない。
街が繁栄したことによって地元民は子どもたちのために公園が欲しい、市民図書館が欲しいと声が上がるなどもっとよりよい街にしたいという気持ちがあった。
家を出るとそう言った声が多く飛び交っていて、家族内ではアウトレットや拓殖昭成付属の小学校や中学校の分校が来たからこそ、ここまで発展したなと話していた。
バレンタインの日の昼に突然、家の呼鈴が鳴る。
誰だと思って和真が出るとお父さん、お母さんに挨拶をしたいから呼んできて欲しい。
言われるがまま、リビングにいるお父さんとお母さんを呼んで玄関に人が来ていることを伝えて家族揃って向かう。
扉を開けて両親と水色のトップスと白のミニスカートの女の子が立っていた。
この家族が呼鈴を鳴らしていたのは佐賀から引越ししてきてその挨拶のためたった。
話をしているとどうやら最後の引越しの挨拶だったようだ。それならば狭い家ですがと家に上げる。
女の子のお父さんとお母さんは和真と目を合わせる。「この前は柚那を助けてくれてありがとう」
そう言ってリビングに向かう。
和真のお父さん、お母さんに女の子と会ったことあるの?それなら仲良くしてもらわないとねと頭を撫でた。この前ってどこであったのかな〜?
ひとまず家にあったコーヒーとクッキーを出して和真にどこかであったようなことを言っていましたがどちらで会いましたか?とお父さんが切り出す。
「覚えてないですか?数年前、別府駅で娘の柚那をご子息が駅員室に連れて行ってくれた時。お礼をしたくても急がれていて何も出来なくて。またこうしてお会い出来て嬉しい」
そう言ってお互いの家族が握手をしていた。
向かいに座っていた女の子は椅子を下りて和真をちょんちょんしてこっちに来て欲しいと手招きをしていた。
「私、椎名柚那9歳で小学校3年生だから宜しくね。呼び方は柚那でもゆずでも呼びやすいように。この辺りのことは何も分からないから色々と教えてね」
かわいい笑顔に揺れるポニーテールにこんなかわいい女の子が隣の家にいるのか。あの時泣いていたのは柚那ちゃんだったのか、また会いたいと思っていたから正直また会えたことにガッツポーズをした。
和真も自分の自己紹介をする。
「僕の名前は佐伯和真で周りからは和真やかずとか色々な呼ばれ方をしているから好きに呼んでね。また柚那ちゃんに会いたいと思っていたけどまさか隣の家になるとは思いもしなかった」
柚那もあの時の男の子に会いたい、会ってお礼を言いたかったから嬉しかった。
この日を境に和真と柚那は幼馴染の関係となる。
家の近くにあるバス停はジブリの映画に登場するとも言われているが、和真はその映画を見たことがなくてその話を聞いてもピンとこなかった。
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