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私は、中学に上がってテニスを始めた。
今まで、テニス経験なんてない。
部活の雰囲気がよかった、ただそれだけ。
でも、テニスをするに当たって、ラケットやらなんやら用意しないといけない。
私は、母が昔使っていたというラケットを、スポーツショップに持っていった。
母も私も、テニスについてはド素人。
ガットもグリップも何がいいのか全く分からない。
店員さんが候補を出してくれて、それを私が直感で選んだ。
一週間後、ガットを張り替え、グリップを巻き直したラケットを渡してくれた。
とても、輝いて見えた。
私は、そのラケットで夏休み前まで練習した。
楽しくなって、どんどんハマった。
私のやる気を見て、母は新しいラケットを買ってくれた。
私は、高校に上がってもテニスを続けた。
エースになれるほど上手くはないけれど、それなりの腕前にはなった。
大学生になって、独り暮らしをするためにアルバイトをしようと求人を漁った。
その時、あのスポーツショップを見つけた。
今、私はスポーツショップで働いている。
「この子がテニスを始めるって……。ただ、私もこの子も何も分からないから……」
ある日やって来た一組の親子。
また会えたね。
あのときの私に。
私は心の中で呟いた。
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