第1話

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「空いたお皿、下げてもいいですか?」  穂高がアイスティーを手に取ったところで、再び夏海が声をかけてきた。  さっきまでも夏海は視界に入っていたが、目が合うことはなかった。  もしかしたら、店内を見渡している穂高の様子を見たうえで、タイミングを見計らっていたのかもしれない。 「あ、はい。とってもおいしかったです」 「それはよかったです」  これだけ言って、夏海は皿とフォークを回収して、奥の厨房に姿を消した。  穂高のあとに来た客はいないから、夏海自身も少しは落ち着けるのだろうか。  少しして夏海が戻ってくると、穂高とは別のカウンター席にいた客が立ち上がり、会計に入った。  そのときも夏海と客は楽しそうに談笑していた。  その様子をまじまじと眺めていたら、夏海とばっちり目が合ってしまった。  立ち去った客を見送った直後のことで、穂高は一瞬でどうすればいいのかわからなくなった。 「あの、少しいいですか?」  ゆっくりと近づいてきた夏海は、微笑みながら穂高にこう聞いた。  穂高がこの申し出を断るわけがなかった。
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