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「私、お客さんの話を聞くのが好きなんです。だから、穂高さんのこともいろいろ教えてくださいね」
心からそう思っているんだと、夏海の表情や口調から読み取ることができた。
こういう気持ちでいるから、さっきまでのような接客ができるんだと、穂高は素直に感心するのだった。
「ちなみに、営業時間はお昼の十二時から夜の九時までです。時間帯や曜日によってメニューが少し変わるので、いろんなタイミングを試してくださいね」
穂高が何も言えなくても、夏海は笑顔を絶やさず話を続けてくれた。
もともと口数が多くない穂高にとっては、この間合いはありがたいものだった。
「わかりました。じゃあ――」
穂高の言葉を遮るように、ドアベルが荒々しい音を立てた。
その音源に目を向けると、大柄な男の人が二人で入ってくるのが見えた。
「あ、生駒さん! いらっしゃい」
どうやらこの人たちも常連客のようで、夏海はとびきりの笑顔を振りまいて二人を出迎えた。
こうなると、さっき言いかけた言葉はもう出せない。
これで夏海との会話も終わりかと思うと、穂高は無性に寂しくなった。
しかし、それを態度に出すわけにはいかない。
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