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「おいしいです。なんていうか、身も心も温かくなる感じがします」
具体的な味付けや食材について触れることはできず、気持ちの面での感想を伝えた。
夏海の顔色をうかがうことなく、思った通りに答えることができた。
「ありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです」
両手を合わせて、言葉通りに喜んでみせた夏海に、穂高の表情も自然とゆるむ。
こんなに幸せな気分になれたのは久しぶりだった。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言って夏海は、穂高のもとを離れた。
近すぎない距離感というか、接客の具合もとてもいいと思った。夏海のひとつひとつの所作が、全部魅力的に思えた。
一人になった穂高は、夢中になって食事を進めた。
特段おいしいということはないかもしれないが、おなかよりも心の充足感のほうが多く得られたのは間違いない。
完食して手を合わせ、改めて店内を見渡した。
入り口に立ったときは全体像しか見ていなかったが、調度品や内装を細かく見てみると、席によって雰囲気が変わっているのがわかった。
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