第1話

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 穂高が座っているカウンター席は半円型になっているので、どこに座っても中心に立つ夏海がよく見えるし、夏海からすれば、首を回すだけですべての客が見える。  気配りがしやすそうだ。  入り口から見て右側にあるエリアは、木製のテーブルと椅子が無造作に並んでいて、照明はまわりに比べて明るい。  テーブルも椅子も低い位置にあって、屋外にあるバーベキュー場なんかに近い印象だ。今はこのエリアに客は一人しかいないが、団体客はここに通されるのだろうか。  反対側はレトロというかシックというか、とにかく落ち着いた雰囲気で、照明もやや落とし気味である。  木製のパーテーションのようなもので仕切られているが、すきまがあるので、やはりどこにいても夏海からは見えそうだ。  そのエリア一帯には移動できそうな二人掛けのテーブルがいくつかあって、今は少し離れて二人の客がいる。  また、カウンター席の左斜め前には掲示板のようなものがあって、季節限定のおすすめメニューや、何かの案内を表示したポスターが何枚か貼られている。  そして右斜め前には何も置かれていないスペースがある。  一段高くなっているから、ちょっとしたステージみたいだった。  こんな感じで、外から見ても大きな建物だと思ったが、中に入って改めて、なかなかの広さを持ったカフェだということがわかった。  時間帯によって客層が異なるのかもしれないが、大勢の人でにぎわっている様子も見てみたいと思った。
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