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老人の後に続いて歩くと、奇妙な模様の付いた大岩や歪な形の立木、それから絵に描いたような錆びたナイフやらが転がっていた。
その様子だけでもこの島の危険さがひしひしと伝わってくる。
──やべぇなぁ……早く出る方法を考えなくちゃ。
確かにあの時は自殺行為に近かったとはいえ本当に死にたかった訳でもないし、ましてや般若湯に導かれて戯けた脳内ならば、少しの過ちぐらいは見逃してくれたって良いものだ。
「あのー……貴方はここの住人なんですか?」
「まぁそんなところだ」
「……失礼ですが、よくこんな所に住めますね」
ふぉっふぉっふぉっ……と独特の笑い方で肩を揺らした老人は、「そりゃぁ、魔法使いだからなぁ」と空を仰ぐ。僕は肩甲骨と背骨が浮き出た薄汚い老人の背中を睨みながら、分不相応な天の裁きに悪態をつく。
「ほら、ここだ」
唇を尖らせて拗ねる僕に全く動じない老人は、急に歩みを止めると黒ずんだ指先で木の茂みを指し示した。
老人が急に止まったので、危うくつんのめってぶつかりそうになった僕は、老人が身に纏う鼻を刺すような悪臭にえずく。
「うぇっ……あ、ありがとう……ございます」
涙目のまま鼻と口を手で覆った僕は、老人から逃げるように指された方を目掛けて小走りした。
そこには、本当に小さな泉が湧いていた。
目算50センチもないであろう、両手で輪っかを作るぐらいの小さな泉はこんこんと清水を湛え、僕のやつれた顔を映し出す。
しかし、そんな感傷的になるのも束の間、僕は水面に引き寄せられるように顔を近付けると、手で掬って水を掻き集めるように飲み始めた。
一体いつぶりかも分からない潤いに縛られた奴隷となった僕は、映し出される不気味な森を壊すように波紋を広げ何度も喉の奥に水を押し込む。
「ぷはぁ……あぁ、生き返るッ!」
いつの間に納得のいくまで飲み進めた僕の後ろに立っていた老人は、朗らかな声で「そうだろうなぁ……」と遠い目のままで笑うと、「たんとお飲み」と呟いた。
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