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「はぁ……もう一生分の水を飲んだ気がします」
すっかり機嫌が良くなった僕は笑顔で老人の後をついてゆく。見た目は確かに小汚いものの、ビックリするほど親切な老人は、この島で唯一僕を歓迎してくれるらしい。
「ところで若人、休む宛はあるのか?」
「いえ……今の所は野宿ですね」
「ほほう、この森は虎狼が多くてねぇ……ちゃんとしたところじゃぁ無いと喰い殺されるかもしれん」
顎に手を当てて考える仕草をする老人は、僕を脅すようにこの森の恐ろしさを言葉にしていく。
「それに猛獣だけじゃぁ無い、蛇やら蜘蛛やら蠍やら……猛毒をもったバケモンが当たり前のように徘徊してる」
「……どうにかならないんですか?」
「ちゃんとした家なら問題なかろう……どうだい、今夜はうちに泊まるか?」
しわくちゃの顔をさらに潰して笑う老人の口から覗くすき欠けた歯がなんとも怪しいが、それでもこの申し入れを断る理由は一つもない。
僕は二つ返事で老人に握手の手を差し出して笑い返した。
「すぐ着くさ……この泉の近くに家を建ててたからのぅ」
ご機嫌な老人の金魚の糞に成り果てた僕は、腹に違和感を感じる。
──浄化されてない水を飲んだのは良くなかったか?
まだこの環境に慣れていないせいか、体が拒否反応を起こしたように腹部が重い。額に滲んだ嫌な汗を認識させるように吹き抜けるそよ風は、この島で1番意地悪な気がした。
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