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「あら、同じ姓氏なのね。私は乙和御前と呼ばれているわ。佐藤基治の妻よ」 なんっ、だっ、て─⁠─⁠─⁠─⁠? 自分の中で、一瞬、息が詰まった感覚がした。 しっかりと、その人の顔を覚えたくて、その人の顔を見た。 「乙和、様─⁠─⁠─⁠─⁠」 ポツ、と私は呟いた。 乙和様はふ、と口許を緩めて話し始める。 「あなた、金色堂の傍で倒れていたそうよ。それを偶然、毛越寺の住職が見つけてね。お館様に報告があったの。私の息子が確認しに行ったら、金色堂の裏手で倒れていたと言っていたわ」 「私はそのまま御子息に運ばれたのでしょうか?」 「えぇ、そうよ。でも、着ていた服がすごく汚れていてね・・・。申し訳ないけど着替えさせたわよ」 えっ、じゃあ今は着物? 前の服は今どこでどんな状態? 軽く混乱してると、誰かが歩いてくる音と、私が寝かされている所の外側で、立ち止まる気配がした。 「失礼。入りますぞ」 男の人の声でそう言われてから、シャッ、と何かをスライドさせる音が聞こえる。 「目覚めたようだな」 その声の人は私を一瞥して、乙和様の傍に、腰をかけた。 「オレは佐藤忠信。お前を此処へ連れてきた」 ウボッ!! めっちゃ勢いよく起き上がりそうなぐらいビックリした。 でも、本調子じゃないからね、起き上がれず、寝かされていた布団の外に倒れ込む。
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