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「ねえ!今から私がやることを、だれにも言わないと誓える!?」
「はい、誓います!」
チコはびっくりした。委員長の答えがあまりに早く返ってきたので、思わず面食らってしまったからだ。
「……その言葉、確かに聞いたからね。おとは、目くらましして!」
「うん!火遁、煙幕の術!」
おとはが口元で「OK」サインを作って息を吹くと、分厚い煙がもうもうと出てきて、3人の周りを覆ってしまった。
「なんと!火事でありますか!?どこから煙が!」
煙の向こうから、戸惑う声が聞こえる。
「しっかりつかまってて!」
「はい!」
チコは踊り場を蹴って、空中へ躍り出た。
頭の上で、大きな円を描くように杖を回すと、杖の先が青い光を放つ。光が強くなるにつれて、下から吹き上がる風が現れた。
「風の精よ、私達を運べ!」
チコが呪文を唱えると、風はにわかに勢いを増して、二人を中心に渦を巻く。
その後は一瞬の出来事だった。
まるで見えないチューブスライダーを滑っていくように、チコと委員長は足下へ落ちていく。
「あーっ!!」
委員長の叫びが、風が吹く中でもはっきり聞こえた。
あっという間に一階まで降りて、お化け団地から飛び出して、吹き上がるようにフェンスを越え、そっと地面に靴の裏が着いたとき、激しく吹いていた風は消えていた。
チコが杖を短パンのポケットにしまうと、
「チコちゃん、ほうき!忘れてるよ」
「ん、ありがとう」
いつの間にか4階から降りてきたおとはから、踊り場に置いてきてしまったほうきを受け取った。
さっとほうきにまたがると、となりでぼうっとしたままの委員長の背中を叩いてやる。
「じゃ、私達は先に行くから。面倒そうなのが降りてくる前に逃げてよね」
「え、あ!ちょ、ちょっと待ってください!」
委員長が慌てて自転車に飛び乗るがちゃがちゃとした音を背後で聞きながら、チコはゆったりと飛び去った。
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