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「え、なに?どういうこと……?」
委員長に一気にまくしたてられて、チコは戸惑い気味に答えるが、
「やはり、誰もいないようでありますなあ。自転車が停まっていたのも、偶然だったのでは?」
「そんなこと言って、私達から逃げて隠れてるかもしれないでしょ?ねえ、お願いだから、もう少しちゃんと見ていってちょうだい」
下から聞こえた声に表情を変えた。
「え、は?私達以外に、だれかいるわけ?委員長、だれと見回りに来たの?」
「いえ、私が連れてきたわけではありません!きっと、私と同じように「だれか忍び込んだのでは」と考えた方が警察の人を呼んだのでは……」
「そんなの、証拠がなければ気付かれるはずないじゃん。委員長もバレないように入ってきたんでしょ?」
「もちろんです!入るときも少ししか門を開けませんでしたし、いつでも逃げられるように自転車もフェンスの前に停めてきました!」
チコは思わず委員長の肩を叩いた。
「ばか!それじゃ怪しまれるに決まってるでしょ」
「え?それなら、お二人はどうやって入ってきたんですか?」
「う……!」
委員長に聞かれて、チコの視線はアパートの壁へ飛んだ。そこには、チコが飛んでくるのに使ったほうきが立て掛けられている。
「まさか、毎回ほうきで飛んできてるなんて、ばか正直に言えるわけない。おとはも忍術で入ってるから、委員長みたいに忍び込んだ証拠ができるわけじゃない。もし委員長がそこに気付いたら、言い訳ができない……!」
そう考えて、内心冷や汗をかいていると、
「あの……」
二人のやり取りを見ていたおとはが、小さく声をかける。
「なに?悪いけど、ちょっとまって……」
「でも、言ったほうがいいと思って」
「だめに決まってるでしょ!」
「ううん、そうじゃなくて。……ほら、」
おとはが指さしたのは、先ほど委員長が登ってきた階段だった。そこから、
「上の方で、なにか聞こえたような気がしますなあ」
コンクリート製のステップを踏む音がだんだん大きくなる。
「上がってきてる。こっち来て!」
3
チコは壁に立てかけていたほうきを引っ掴んで、反対の手で委員長の手を取った。
そのまま、階段に背を向けるようにして走り出す。2人の後ろからおとはも続く。
「どうするんですか?」
「この建物は真ん中と西の端に階段があるはずだから、そこから降りれば……!」
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