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教卓に今日の宿題を置き、クラスメイトが分かるよう、黒板にメモを書き残す。
最後にカーテンと窓を開けて、教室に朝の空気を採り入れる。
「よし、今日もばっちり!」
毎日のルーティンになり始めた朝の儀式を終わらせて、委員長は満足げに大きくのびをした。
「……ん?」
そのとき、委員長は見慣れないものが浮かんでいることに気付いて、目を細める。
教室の窓から空を見上げる先、黒い点のように見えるものが学校に向かって飛んでくる。
委員長が目を凝らしてみると、だんだんその形が見えてきた。
「何あれ。鳥じゃない。ドローン、とか?でももっと大きい気が、」
よく見ようと窓から身を乗り出しすぎて、体がつんのめる。
「わっ!」
五年一組は校舎の3階にある。委員長は空中に放り出されないように、窓のさんを掴んで体を支える。やっと視線を戻したときには、空を飛んでいた“なにか”は姿を消してしまっていた。
委員長は不思議そうな顔を浮かべて、しばらく空を眺める。
やがてクラスメイトが次々と教室に入ってきたので、窓を閉めてそちらに顔を向けた。
「おはよー。やっぱ早いね、委員長」
「おはようございます!宿題は今のうちに前で集めるから、持ってきてください」
なにしろ、委員長は頼りにされると、どうしても応えたくなってしまう性分なのだ。
ちょうど同じ頃、宮代小学校の隅にある小さな物置の近くに、箒に乗ったチコが降りてきたのだが、それを知る人は誰もいなかった。
4
8時10分。チャイムが鳴ると全員が席に座る。
五年一組の教室は机が横に5つ、縦に6つ、全部で30席が並んでいる。委員長は前からも窓側からも2番目の席で、今日の時間割を確認するのに余念がない。
その列の一番後ろの席では、チコが「周りにはお構いなし」といった様子で分厚い本を読んでいる。
どうやら2人は同じクラスということらしい。
五年一組の面々が隣の席の子と話したり、忘れた宿題をなんとかしてごまかそうとしたりして時間を潰していると、担任の上田先生が教室に入ってくる。
今年35歳になる上田先生はどこかくたびれたような雰囲気の先生で、とりわけ朝は元気がない。
「おはよう。それじゃあ、出席を取るぞ。相沢沙良さん」
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