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ほたるちゃんはいつも通り学校に来ていたが、その表情は暗く、まるで別人のように見えた。クラスの雰囲気は重く、息苦しさを感じる程に居心地が悪く、初めての状況にみんな困惑しているようだった。
「ホテルちゃん」
休み時間、教室のどこかで誰かが言った。
次に、数人の笑いをこらえているような声。
それが始まりだった。
ほたるちゃんが教科書を忘れたり、宿題のプリントを無くす事が多くなった。下駄箱の靴が中まで泥まみれになっていたり、机の中に虫の死骸入っている事もあった。
みんな、それを見てニヤニヤと笑っていたり、目を背けたりと様々な反応をしていたが、誰もほたるちゃんの事を助けようとはしなかった。
それでも、ほたるちゃんは毎日学校に来た。
誰かが言った。ほたるちゃんはサイコパスなんだ。実は感情なんか持ってなくて、周囲の人たちに好かれるように演技をしていただけ、心の中ではみんなを見下している。
ほたるちゃんの身の回りで起きる出来事は悪化していった。
給食にゴミが入っていたり、トイレから全身がずぶ濡れになって帰って来たり、何もない場所で転ぶ事も多くなった。
ほたるちゃんは何があっても黙って耐えていた。
そしてついに事件が起きた。
あるグループが、放課後にほたるちゃんを古い空き教室に連れて行った。そして、ほたるちゃんを掃除用具入れに閉じ込めようとしたのだ。
ほたるちゃんは暗くて狭い場所が何よりも苦手だったから本気で抵抗したが、その抵抗も空しく終わった。
ドアを内側から激しく叩く音とほたるちゃんの絶叫に唖然としていると、不意にほたるちゃんの声が聞こえなくなった。それから徐々にドアを叩くも小さくなり、代わりにヒュー、ヒュー、という変な音が聞こえてきて、みんなは怖くなってその場から逃げ出してしまった。
それ以来、ほたるちゃんは行方不明になった。
警察や町の大人が町中を探したが、結局、ほたるちゃんはどこにも居なかった。
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