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木が薄紅色のころもをまとい、緑色のきぬを重ね、こがね色のぬのをひるがえす。何度季節がめぐったか。
陽射しが強さを増してきた頃、二人の青年が走ってきた。一人は膝に両手をついて、肩を上下させている。
「そろそろ、休憩しようぜ」
そう言うと彼は大きく息を吐いた。両手をついたままで、荒い呼吸を繰り返している。
「えー、早くね? ゆうきはもうちょっと肺活量を鍛えないと」
もう一人が腕を組む。こちらの青年は、口を緩ませて相手を見ている。
「けんとがバケモノすぎるだけだろ。ボールのコントロール下手なのに、そういうとこすごいよな」
「なんか褒めてるって感じしないな」
「褒めてねえから」
二人で笑い声を上げた。首にかけたタオルで顔を拭く。彼らはすぐに、まだらに落ちた影の下を駆け抜けていってしまった。
風が強い日もあった。雨が降り止まない日もあった。それでも、私の体は朽ちることなく、はるなと呼ばれたあの子を待ち続けている。
ざくざくざく、と大人数の足音が響いた。
「高校生になったら、みんなばらばらだね」
「そうだね。りなは引っ越しちゃうんでしょ?」
「うん。四月からはね」
「絶対、みんなで遊びいこうね」
「行こう行こう」
紺色の衣服に身を包んだ少女が五人、固まって歩いてきた。見た目も似ていて結束が固そうなのに、もうじき離れ離れになるらしい。五人はベンチの前まで来た。三人が座り、二人は両脇に立った。
「みんなずっと一緒にいられたらいいのに」
「そうだね。りなんち、ここからどれくらいかかるんだっけ?」
「電車で二時間くらいかな」
「ええ、けっこうかかるんだね。遊びいけるかなあ」
「行こうよ。行きたいよ。みんなで。ね?」
別れを惜しんでいるのだろうか。五人はずっとベンチの周りでお喋りしている。空があかね色になり、ようやく彼女たちは去っていった。
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