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雨が降り、風が吹く。青い空、あかね色の空、灰色の空。移り変わる景色を、ただじっと眺めているだけだった。
そんな私を、砂利に埋もれそうな私をすくい上げてくれたのが、彼女だった。きらきらと輝く瞳で、私を見つめるのだ。
キャッキャと笑う彼女。私の周りをぴょんぴょん飛び回る彼女。子犬みたいで、その全てが愛おしい。
愛おしい、だなんて。私にそんなことを思う権利があるのだろうか。我ながら馬鹿げていて、仮面のように固まった顔が緩んでしまう。
彼女はいつも誰かと一緒に来ていた。二人とも髪を高い位置に二つ結んでいた。彼女の髪にはピンク色の玉が、もう一人には水色の玉がついていた。それで髪をまとめているのだろう。
「はるなはそっちに座って」
水色の子が言うと、ピンクの彼女は弾んだ声で「うん」と頷いた。
はるなと呼ばれた彼女が平たい台の端に跨ると、水色の子が反対側をえいと押し下げ、同じように跨った。
だが、二人の重さに差があるのか、水色の子は下がったまま動かない。
「なつみのほうがおっきいから」
ピンクの子、はるなが言う。すると水色の子は板に跨ったまま、器用に中心地へ近づいた。
今度は上手くいきそうだ。
「せーの」
水色の子、なつみの掛け声とと共に、私の体はゆらゆら揺れた。
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