『序章・花を探す蔦の川』

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『序章・花を探す蔦の川』

 "かわいそう"だと――。  野良猫へ餌付けをする人達の気が知れない、と思った。  憐憫と同情といった自分達都合の一時的な感情で、野良猫へ優しく手を伸ばして撫で、餌と水を蒔く。  ちゃんと家で飼うことも、死ぬまで面倒を見てやることも、できないくせに。  最初から飼えないのなら、餌も水も与えなければいいのに。  最後に突き放すのなら、最初から優しくしなければいいのに。  最後に捨てるくらいなら、最初から拾わなければ―― のに。  それこそは、飼い主であり親としての責任――慈しみだと思った。  目先の感情に流されて相手へ干渉し、期待を抱かせ、いざという時は他人任せにして突き放す。  そんな"偽善者"達を、冷ややかな眼差しで見下してきた。 ・
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