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「申し訳ございません。それらしき届出は、ないようで……恐れ入りますが、あなたは」
しかし今までの俺なら、「偽善者」、と心の中で軽蔑していた人達を非難できなくなった。
何故なら、最近になって、"俺"も他人のことを言えなくなったからだ。
「申し訳ございません。戸籍の有無も確認も、個人情報保護のため、無断開示はできません。親族もしくは委任状を授かった第三者であれば、可能ですが……」
しかも、俺の場合、野良猫や犬どころではない。
「恐れ入りますが……あなたと、お探しになっている方とは、どういったご関係で」
さらに、"とんでもないモノ"を拾ってしまった。
「俺の――"婚約者"です。最近まで一緒に暮らしていたのですが……」
東北和国の海でたおやかに浮かぶ牡丹島――たった二つしかない都市には、やたら類似する名の町村の数ばかり多い。
牡丹市と並ぶ芍薬市・芍薬町。
そのの中央に位置する、『芍薬市役所』の総合相談窓口にて。
氷海さながら冷えた目付きだが、神妙な声色で答える男性に、対応の女性職員は憐憫の眼差しを向けた。
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