その地は「道」となった

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中には、お伊勢参りに関心がない人もいた。 そういうときは、俺の特技を使うのだ。 「あの……ハンコ、いりませんか?」 俺は手先が器用だ。 ハンコをその場で彫って売り、小銭を稼ぐことができた。 また、書の道にも通じていたので、書いた字を買ってもらったこともあった。 俺は絵の道にも通じていた。 絵というのは、描けない人は描けないものらしい。 人の顔も風景も、頼まれたものはなんでも描いた。 みんな、喜んで買ってくれた。 こうして、行く先々で特技を生かしてお金を稼ぎ、日本中のほとんどの道を歩くことができた。 旅に出てから、すでに四年の歳月が過ぎた。 次は異国を旅してみるとするか。 鎖国をしているので、異国に行くなら長崎に行くしかない。 そこでは、清国や阿蘭陀(オランダ)との交易が行われている。 うまくいけば、異国に渡れそうだ。
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