その地は「道」となった

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俺の親も兄弟も、すべて亡くなったとのこと。 長崎で仏の道を説いている間に、俺の身内はすべて鬼籍に入ってしまっていたのだった。 俺は天涯孤独となった。 俺に帰るところはなくなった。 仏道に入っても、結局のところは親不孝な人生であった。 俺にできることは「旅」だけなのだ。 無力さに打ちのめされた俺は、僧侶を辞めた。 還俗し、旅人に戻る決意を固めた。 長崎で暮らしていると、やたらと耳にするのが異国の話だ。 元々、異国に興味はあったのだが、いかんせん、庶民が異国に渡ることはできない世の中であった。 そんな中、日本のはるか北、蝦夷地(えぞち)露西亜(ロシア)という異国の船が盛んにやってきているという話を聞いた。 幕府は、蝦夷地を守るために地理調査を行う者を募集しているとのこと。 これだ!! 誰も行きたがらない極寒の未開地を旅して記録を取る。 これぞ、我が天命!! 俺がやらずして誰がやる!! こうして、俺は蝦夷地の箱館(はこだて)へと渡った。
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