その地は「道」となった

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「俺も旅をしたい!」 目の前を通り過ぎる大勢の旅人たち。 旅をしている人は、みんな楽しそう。 旅ってそんなにいいものなのか。よし、俺だっていつかは「旅」をしてやる! 「武四郎(たけしろう)! いつまで外を眺めているの? さっさと寺子屋に行きなさい!」 「はい、母上」 俺はまだまだ子供。 今はしっかり勉学に励むしかない。 そして、いつかはみんなみたいに旅をする! 寺子屋に向かう途中の道でも、大勢の旅人とすれ違った。 それもそのはず、俺が住んでいるのは伊勢(いせ)。 お伊勢参りなら関所も通過しやすいということもあり、日本中の人が「お伊勢参り」をしに来るのだから、伊勢に住んでいて旅人に会わない方が無理というもの。 俺が十三となった年、お伊勢参りをした人は一年間で五百万人もいた。 こうして、俺は旅への憧れを持ちながら文字の読み書きや絵画を習得し続け、ついに十六となった。 庄屋の息子なので、文字も習わせてもらえたし食べるものにも困らなかった。 しかし、自分で自由になるお金なんてまったくなかった。 それでも、俺は旅に出たい!! お金なんてなくても、道中でなんとかなるだろう。 衝動を抑えきれなくなり、ついに、親に無断で旅に出てしまった。
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