さようならのその先は

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また会えたね。 どうしてそんな顔で言うの? 私は会いたくなかったよ。 私はね、別れた人とは友達になれないの。 女友達だって、一度ケンカしたら二度と仲良しには戻らない。 戻れない。 13年間付き合ったあなたに、どんな気持ちで別れを切り出したかわかってるの? 歯を食いしばって泣いたあの日からまだ7ヶ月しかたってないよ。 伝えきれてなかったみたいだから、もう一度言おうか。 結婚したかった。 結婚して欲しかった。 あなたはまだいいんじゃない?って笑っていたけれど、私だって余裕でいたかったけれど、女には身体的期限があるの。 子供が欲しかった。 もしかしたら間に合わないかもしれない。 その場合は他の生き方もあるのにそれを考えられないくらい焦っていた。 そしてみんな結婚したのにあんたは…って親に噛みつかれるのも辛かった。 私たちが知り合った会社を辞めてから、不安定な生活だったのも不安だった。 今思えば若いのだからやりたいことに夢中になってもよかったんだけどね。 半分は応援していたんだよ。 半分は淋しかったけど。 会社員として働く私は、型に填まらないあなたの人生に自分を重ねて勝手に不安になっていた。 だけど変わって欲しかったわけじゃない。 そのままのあなたを好きになったのだから。 じゃあどうなって欲しかったのか。 今となってはもうわからない。 …ネクタイ締めて座っているけど、息苦しくないの? 私が仕掛けた罠に締め付けられて身動きがとれないでいるのではないの? 自分で望んだ道なの? それからね、頻繁にメールされても困るのよ。 なぜあの頃には出来なかったの? 勝手に自分の近況報告をしてきてさ。 くたばれ!って思いながら読んでたよ。 何かの雑誌に憎いのは未練がある証拠、なんて書いてあったけど、そんなわけない。 そんなわけがない。 明日、私を心配してくれているゆきちゃんがお友達を紹介してくれるの。 とりあえず前に進みなよって。 お父さんの工務店で働く大工さんなんだって。 行かないで欲しいなんて、バカなの? そんなこと言われたくない。 わかってる。 わかってるよ。 遊びに来ていたアパートも携帯電話も変えてなかった私が一番バカだって。 明日の待ち合わせ、わりと早いの。 だからそろそろ帰らなきゃ。 これ以上、帰る理由が無くなる前に。
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