降り立つ陽光

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 静かな書庫。受付には夕陽に照らされた受付の人が本を読んでいた。 「あの、ここに来いって言われて来たんですが」  勇者はヤタと別れ、最後の試練の講師の居る書庫へ来ていた。 「ん? あぁ噂の勇者様ね。司書件講師のヤサカだ」  本を閉じる。机のメガネをかけ受付から手を伸ばすヤサカ。 「は、はい。お願いします」  握手をする。ひんやりとした冷たい手だ。 「私はあの2人とは違って普通の事を出来れば大丈夫だから」 「あ、ありがとうございます」 「試練は私の出すテストで100点を取る事」  ヤサカは無表情で淡々と説明していく。 「テストって、一体どんな?」 「簡単な一般常識と魔物の問題さ」  ヤタは読んでた本を勇者に渡す。タイトルは魔物大百科と書いてあり、ペラペラと捲ると色々な見たことない生物の名前と特徴、絵なんかが沢山載っていた。 「この書庫は私が集めた魔物の本が多く貯蔵されてる。そこから問題を出すんだ」  そう言われて勇者は書庫を見回すと並べられた本のほとんどが魔物についての本だと分かる。ゴブリンだけで何十冊とありそうだ。 「まさか、この大量の書物から問題を?」 「うん。私じゃ魔物を捕まえられないから」 「なんて、こったい」  勇者はそのまま床に手をついた。 「戻ったよ……」  自室に戻った勇者。説明だけの筈だったのに、非常に疲れている。 「大丈夫ですか? 勇者様」  ベッドに座って本を読んでいたリキュアが慌てて駆け寄る。 「優しいのはリキュアだけだよぉ」  勇者はリキュアの暖かい体に埋まる様に抱きついた。 「ゆ、勇者様!? くすぐったいですよぉ」  コロコロと笑うリキュア。 「そういえば今日はどこに行ってたの?」 「第1王女様と第2王女様に会いに」 「それってお姉さんって事? 何でそんな他人行儀なの」 「それは……色々ありまして」 「そっか、王族も大変そうだね。そういえば明日早速剣の訓練なんだよね、怪我したら回復よろしくね」 「はい! もちろんです! 私にはそれしか有りませんので」  どこか自虐的だが、その顔は笑顔に満ちていた。
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