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「やっ!ちがっ、そのっ、それだけじゃないよ!」
『それはわかってる。でもセックス気持ちよかったってのも理由のひとつなんだろ?』
「……否定はしない。あんだけ尽くしてくれたら、もう……」
『羨ましいぜ〜。オッサンが20代の女とセックスできるなんて。俺なんてもう無理だわ』
「そりゃ既婚者だからな。てかお前声でかすぎ!奥さんに怒られるぞ!」
『大丈夫大丈夫。嫁も子供も寝てるから』
そう言って凌太はヘラヘラと笑った。全く、こいつは妻子持ちで幸せそうに暮らしてるのに、こんな卑猥な会話をでかい声で……。いや、相談した俺が悪いな。
『つか、実は清楚と見せかけて、金か体目当てのヤリマンだったりして?』
「そ!それはない!と信じたい……」
『……ま、話聞いてる限りなさそうだな。大人しくて感じのいい子っぽいし。あんまり男経験もないのかな?』
「そこは聞いてないからわかんないけど……少なくとも直近でヤリまくってる感じはなかったかな」
『それは股の締まり具合で?』
「……うん。めちゃくちゃ締まりよかった」
しばらく下ネタトークが繰り広げられた。最低すぎるしこんなことが会社に知られたら、もう降格処分は免れない。ここまでお下劣な話ができるのは凌太にだけだ。
ふと、美澄さんとのセックスが思い出される。会社でたまに見せてた笑顔を何度も見せてくれて、可愛かった。長い髪はさらさらで綺麗だったし、裸も綺麗で小柄なのに胸も大きくて柔らかいし、喘ぎ声や感じてる顔も色っぽくて……。普段真面目な彼女が、俺の腕の中で乱れていく姿は美しかった。
俺にも気持ちよくなって欲しいって言って、色んなことをしてくれた。こんなオッサンの俺相手に、あんなに濡れて感じてくれて……。抱き締めてキスをするだけで、愛されてるって実感が湧いてきたんだ。
『七瀬さん……好きです。大好きです』
あの時の言葉が頭から離れない。そんなこと言われたら……。こんなに真っ直ぐに愛を向けられたことなんて、今までになかった。
一体いつから好きでいてくれたんだろう?全く知らなかった。でも、思い返せば最初の頃は髪をひとつに結んでいたのを、ここ半年くらいはハーフアップにしたり色んなアレンジをしていた。服装も一気にバリエーションが増えた気がする。周りの社員達も「美澄さん、最近オシャレだよな?」「彼氏でもできたのかな?」なんて話してた。
……もしかして、その頃すでに?自惚れかもしれないけど、もしそうだったら健気すぎて可愛い……。
もっと美澄さんのことを知りたい。会って色んな話をしたい。俺の知らない彼女を教えて欲しい。
心から彼女を愛したい。こんな感情を持つなんて初めてだよ……。
彼女の雲ひとつない笑顔が俺の頭に焼き付いていた。
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