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課長は一瞬固まった後、少し頬を赤くさせた。
「け、結構前からだったんだね……。俺、美澄さんから好かれてるだなんて、あの日の飲み会で言われるまで全然気づいていなくて……」
「そうですよね、私、臆病でほとんど課長にアピールできてなかったから……。このままじゃ想うだけで何も始まらず恋が終わってしまう。それが怖くて、あの日思い切って告白したんです」
課長に恋人を作る意思がないことはわかっていた。きっとあの日行動に起こさなければ、今でも2人の距離は遠いままだっただろう。私の気持ちはそれだけ、日に日に強くなっていたんだ。それは、告白した後の今も……。
「すみません、私、ちょっと重いですよね……」
「いや、違うんだ。その、めちゃくちゃ嬉しいんだ……。こんな一途に愛されたことが初めてで……。俺が知らない間に、1人の女の子の気持ちを揺さぶっていたことがすごく愛おしい。何でもっと早く気づかなかったんだろうって情けなく思うよ」
「そ、それは仕方ないですよ!ホントに小さなアピールしかできていなかったですし……」
たった2週間で、こんなに関係が変化するとは思っていなかった。嫌われてしまうことも覚悟していたから、前向きに変わっていこうとする今を嬉しく感じる。
「まさか美澄さんに想いを寄せられているって、はっきり言われるまで気づいてなかった。俺は『誰とも付き合う予定がない』って酷いことを言ってしまった。けど、関係を持って美澄さんと色んな話をして……今までに会ったことのないタイプの女性で、もっと深く知りたいと思った。だから今日もこうして誘ったんだ」
少し一呼吸置いた後、課長は真剣な表情で私を見つめた。
「俺は恋愛に臆病な男だけど、美澄さんの健気で一途な想いに心を動かされた。俺も変わりたい。あの日あんな自分勝手な振り方をしてしまったけど、今度は美澄さんのことをもっと知ってからきちんと答えを出したいんだ」
その力強い瞳は嘘などないと信じたい。まだ付き合っているわけではないけど、恋が終わったわけでもないと知った。単純に嬉しかった。玉砕覚悟の告白だったから、まさかこうして関わりを深めることができるなんて夢のようなんだ。
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