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2人は車を降りた。
お世辞にも綺麗とは言えない巨大プレハブ倉庫の中から
『バシィン!バシィン!』と、激しいミット打ちの音が聞こえて来る。
「ここにユウスケがいるんだよな?」
サトルがシュンに聞く。
「まあ俺も初めて来たからわかんねーけど、あってるはず」
自信のなさそうな顔でシュンが答える。
入り口をくぐり建物の中に入ると、いかにもと言った感じの和彫で短髪の厳つい兄ちゃんたちがミット打ちをしたりサンドバッグを叩いている。
シュンはフロアをぐるりと見渡し、1番近くにいたサンドバッグを叩く厳つい兄ちゃんに話しかけた。
「あのー、ユウスケってやつはここにはいないのかな?」
「あ?」
男はサンドバッグを叩く手を止めた。
「ユウスケってやつ、いない?」
「あぁ、ユウスケさんの友達っすか?」
「そうそう、て、言ってもだいぶ昔のだけどね」
男はグローブを外しながら続ける。
「ユウスケさん、今の時間だと向こうの小さいプレハブで子供食堂やってるんすよ。
「子供食堂!?」
「そうっす、この辺の子供って、今の時代でも家庭環境複雑とか、家に帰れないとか、結構多いんすよ。だからユウスケさんはそんな子らのために色々やってくれてるみんなのアニキなんすよ」
「みんなのアニキ‥あのユウスケが‥」
二人は小さなプレハブの方に足を運んだ。
「やべぇ!逃げろ逃げろ!」
プレハブの入り口から小学校高学年ぐらいの二人の少年が勢いよく飛び出してきた。
「こらぁぁあ!テンシン!ヨシキ!テーブル拭いておけって言っただろぉがー!!!」
その後ろからオタマと鍋を持ったユウスケが出てきた。
「ユウスケ!」
「あ?」
ユウスケは二人に気付いた。
「お前ら、何やってんの?」
筋骨隆々でエプロン姿のユウスケを見てシュンは笑った。
「似合ってんじゃん」
「ころすぞ」
ユウスケは微笑んだ。
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